渡辺直美への容姿侮辱問題で「五輪離れ」を決定的にした組織委の内情

左から橋本聖子会長、森喜朗氏、佐々木宏氏

ついにデッドラインを越えたのか。東京五輪の開閉会式の演出を統括する大会組織委員会クリエーティブディレクターの佐々木宏氏(66)が演出チーム内のLINEでタレント渡辺直美(33)の容姿を侮辱した問題が、大騒動に発展している。約1か月前には森喜朗前会長(83)の女性蔑視発言で世界中からバッシングされたばかり。今回の一件で国民の〝五輪離れ〟は決定的となり、海外からも懸念の声が高まる。何より最大の不安は組織委が空中分解寸前に陥っていることだ。ぶざまな姿をさらし続ける組織委の内情とは――。

女性蔑視発言に端を発したポスト森騒動を経て橋本聖子新会長(56)が誕生したのが1か月前。ようやく雨降って地固まる…と思われたが、またもや世界に恥をさらしてしまった。

佐々木氏が演出チーム内のLINEで「ブヒー ブヒー」「オリンピッグ=渡辺直美さん」と侮辱的な文面を投稿したのは昨年3月のこと。これが「週刊文春」の報道で世に知れ渡り、佐々木氏は辞意を表明。橋本会長は国際オリンピック委員会(IOC)に報告するなど、大問題となった。ただでさえ新型コロナウイルス禍で五輪開催が危ぶまれているが、森騒動で逆風はさらに強まり、今回の一件で東京五輪への不信感は決定的だ。

窮地に追い打ちをかけた理由は、ズバリ騒動の中身。今回は侮辱行為が批判の対象となったが、それ以上に疑問視されているのが「仲間内のLINEのやり取りが外部に流出した」という事実だ。侮辱表現は仕事中のツールに書き込まれたものの、公開を前提としないクローズの場であり、しかも1年前の出来事。当事者同士の指摘で解決している問題でもあった。それが今になって公になったのは明らかに内部からのリーク、つまり〝内部分裂〟を意味する。

ただ、これは氷山の一角に過ぎない。組織委内をよく知る五輪関係者は「騒動続きで組織委内は崩壊しかけていますよ。リーダー連中がこれでは、先が見えない中で必死に作業している現場の士気が高まるはずがない。国民に五輪をアピールするどころか、自分たちが開催するムードではないですよ」と実情を語る。

もともとたまっていた現場の不満がここにきて一気に爆発。もはや空中分解寸前だという。過去に組織委の要職就任の依頼を拒否した五輪競技団体関係者も、問題は「組織委の体質にある」と指摘する。

「組織委ってお役所仕事の極みなんです。指揮を執るリーダーたちはビジョンを示せない人が多く、名誉職的な考えで採用されているので、不測の事態が起きると対応できない。さらに全ての物事がIOCの考えに左右されるのでブレまくり。五輪に寄与できる魅力はあるのですが、それを消しちゃうくらい組織委のリーダーに嫌気を感じますね」

その上で、企業危機管理の専門家は「もはや森さんの問題だけではないということ。(組織委は)統制が効いていないのかもしれないし、中枢にいる人の感覚が(今の時代と)ズレているのかも。このままでは『五輪中止』の声を抑え込むのは難しいと思う」と言い切った。

騒動続きの背景には組織の脆弱さがあるのは間違いない。機運醸成の中心的な役割を果たす組織委がこんな状態では、残り4か月に迫った東京五輪には不安しかなく、海外五輪関係者からは「日本のスポーツ界は終わっている」と厳しい声が飛んでいる。現状ではどう見ても「開催中止」にかじを切るしかないはずだが、果たして…。

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