16歳から契約!巨人の逸材 “総獲り計画” ドミニカの次は台湾「第2の呂明賜」発掘へ

豪快なスイングで「伝説」を残した巨人・呂明賜(1988年)

「第2の呂明賜」発掘なるか――。セ・リーグ3連覇と9年ぶり日本一を目指す巨人は、一方で長期的な選手育成プランにも着手。その一環として今季から台湾スカウトを新設した。そこには将来有望な “金のタマゴ” と早い段階で育成契約を結び、日本で教育と並行して野球を教え込む狙いがあるという。いわば、これからの台湾の有望な人材は、すべて巨人がいただきますという“総獲り計画”。盟主復活へ、今後もあの手この手を繰り出していくつもりだ。

約2週間の長期遠征を終え、18日は休養日。19日からの東京ドームで行われるオープン戦3連戦で総仕上げを行い、26日の開幕DeNA戦(東京ドーム)に臨む。

その一方、フロントの編成部門には新たな動きがあった。今年1月には昨季、ロッテでチェン・ウェイン投手(35=現阪神)の通訳を務めた長江翔太氏(29)と、台湾スカウトとして契約。これまでも台湾球界の情報収集等は行ってきたが、スカウトとして正式に常駐させた。巨人育成選手出身の長江氏は、18年から2年間、台湾社会人チームでプレー。習得した語学を生かし、現地のプロ・アマ関係者との人脈作りに励んでいる。

チーム幹部は「ルール上、台湾からもドミニカ共和国と同じく、16歳の有望株と契約することができる」と狙いを明かす。巨人は今年2月、ドミニカ共和国出身のフリアン・ティマ外野手、ホセ・デラクルーズ内野手の16歳2選手と育成契約。同様に今後は台湾で発掘した“金のタマゴ”とも、16歳の時点から契約する可能性があるという。

これまで台湾での選手発掘では郭泰源が所属し、渡辺久信GMがプレー経験を持つ西武が一歩リード。楽天も20年から台湾リーグに「楽天モンキーズ」を所有するなど、影響力を増している。それでも台湾球界関係者によれば「現地での人気はかつて王(貞治・ソフトバンク会長)さんが所属して、現在も陽岱鋼が在籍している巨人が頭ひとつ抜けている」という。

実際、これまで巨人は台湾に注力してきた。2016年11月には王さんも参加し「巨人OB選抜対台湾OB選抜戦」を台中で開催したほか、16年ドラフトでは7位で廖任磊を指名。陽岱鋼が加入した17年には巨人全主催試合が、地元局で生中継された。そうした現地での抜群の人気をもってすれば、台湾選手獲得の面でも「巨人1強」になれるはず。そこで「サッカーでは各クラブのユースなどでエリートを育成している。野球は日本の高校生は今はアマチュア規定で無理だけど、将来的には同じようになる」(前出の巨人幹部)と、まずはドミニカ共和国と台湾出身選手で「ユース構想」のひな形を作るという。

野球人気の高い台湾からは1980年代に「2郭1荘」の3投手が日本で活躍。106勝、116セーブの郭源治(中日)、117勝の郭泰源(西武)、70勝の荘勝雄(ロッテ)が席巻した。メジャーでも68勝の王建民、同59勝のチェン・ウェインがおり、才能が眠っている可能性は十分にある。

野手の人材も豊富だ。巨人にとって台湾出身選手といえばやはり呂明賜。デビュー戦(88年6月14日、ヤクルト戦)で初打席初本塁打を放ち、1年目で16本塁打をマークするなど強烈なインパクトを残した。通算277本塁打の大豊泰昭(中日、阪神)が成功を収め、現在も陽岱鋼(巨人)、王柏融(日本ハム)、呉念庭(西武)らがいる。

16歳での外国人との育成選手契約は「メジャーはすでにやっている当たり前のこと。将来的にはそうなっていくと思う。その布石」(球団関係者)と先を見据えた一手。果たして狙いどおり〝第2の呂明賜〟を見つけることができるか。

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