きょう開幕

 甲子園球場のある兵庫県西宮市の市花は「桜」。〈球場の近くにはセンバツの決勝に合わせたように満開を迎える木があって、私たちは愛情と敬意を込めて“決勝桜”と呼んでいます〉。何年か前に同市の地域情報サイトが弾んだ筆致で紹介していた▲行き交う人も歓声もない春-昨年は桜たちも寂しい思いをしたことだろう。選抜高校野球はきょう開幕。春を告げる球音が2年ぶりに戻ってくる▲〈好きなことを続けること/それは「楽しい」だけじゃない〉…「夜に駆ける」のヒットでブレーク中の音楽ユニット「YOASOBI」の「群青」にこんな歌詞がある▲昨夏のことを思い出している。全国大会の中止で目標が消えてしまったのは、どの学校も選手も同じだが、チームが強ければ強いほど、甲子園を目指す“本気度”が高ければ高いほど落胆も大きかったはずだ▲一つ上の代から県内の主要な公式戦で負け知らず、本県の大崎高もそんな1校。楽しいばかりの練習では強くはなれない。失意を超え、悔しさも苦しさも超えて臨む夢舞台、大崎高の登場は3日目の第2試合▲YOASOBIは歌う。〈何回でも/ほら何回でも/積み上げてきたことが武器になる〉〈大丈夫、行こう、あとは楽しむだけだ〉-澄んだボーカルが球児へのエールに聞こえる。(智)

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