大伯父・永井博士の如己堂巡り 現代美術家・深堀さん 創作ルーツに思いはせ

如己堂を見つめる深堀さん=長崎市上野町

 独自の技法で本物のような金魚を描く現代美術家、深堀隆介さん(48)=神奈川県=が12日、大伯父で、長崎の被爆医師、故永井隆博士が晩年を過ごした書斎兼住居の如己堂(長崎市上野町)などを巡り、創作活動のルーツに思いをはせた。
 深堀さんは、同市出島町の県美術館で開催中の個展「深堀隆介展『金魚鉢、地球鉢』」(長崎新聞社、県美術館主催、西日本シティ銀行・長崎銀行特別協賛、4月18日まで)に合わせて来崎した。
 深堀さんは、愛知県出身だが、両親が本県出身。祖父は永井博士の弟で、長崎とゆかりが深い。子どもの頃は、如己堂に隣接していた祖父母の家を訪れていたという。
 数年ぶりに如己堂に足を運んだという深堀さんは、建物をまじまじと見つめ、「昔見たときとまったく変わっていない。今でも永井博士がいるような気がするほど神聖さが伝わってくる」と感想。二畳一間の四角い部屋と、酒升の中で泳ぐ金魚を描いた代表作「金魚酒」を重ね、「子どもの頃から四角で狭い空間のものに魅力を感じ、作品としても生かしてきた。如己堂と似ている。何げなく見ていた建物が、自然と心の中で息づいていたのだろう」と感慨深そうに話した。
 その後、隣接する市永井隆記念館(上野町)に移り、永井博士の孫で、館長の永井徳三郎さん(55)と交流。2人はふたいとこ。深堀さんは永井さんから、永井博士が如己堂で白血病と闘いながらも平和を訴え、執筆活動をしていたことなどを熱心に聞いた。深堀さんは「私にできることは創作し続けること。芸術表現を通して永井博士のことや原爆のことを子どもたちに伝えていかなければならない」。永井さんは「芸術が持つ可能性をさらに深めて精進してほしい」とエールを送った。
 深堀さんは、同市松山町の平和公園も訪れ、平和祈念像に手を合わせた。

 


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