SDGs 身の回り考えて 宮崎公立大/四方由美教授に聞く 多様性の尊重、継続を 森氏、女性蔑視発言からみえたもの

しかた・ゆみ 1969年、京都府生まれ。GCN(ジェンダーとコミュニケーションネットワーク・ジャパン)共同代表。日本マス・コミュニケーション学会会員。宮崎市。

 今月8日は女性の権利向上を目指す「国際女性デー」だった。前月には東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(当時)による女性蔑視発言があったばかりで、日本のジェンダーギャップ問題の根深さが露呈された。本人は辞任し新体制が構築されたが、多くの人が反応したのはなぜだったのか。地域社会で引き続き考えたいことは何か-。宮崎公立大の四方由美教授(ジェンダー論)に聞いた。(聞き手 生活文化部長・中川美香)

 -「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」といった発言を聞いてどう感じたか。

 「会議で話が長くなる人がいたとして、それは性別に関わりがないのでは-と思った。もし女性が意見を述べるのが上手ではないとしたら、会議に慣れていないからだ-という面からも考えなければならない。女性の登用の歴史は浅い。森さんはこれまでもジェンダーを巡り物議を醸す発言をしており、今回の発言に特に驚きはなかった」

 -批判が高まり、辞任につながった。

 「世間の反応が10年ぐらい前とは違ってきた。世界から見られているという意識を多くの人が持つようになった。五輪があることも大きいが、女性活躍推進の流れや持続可能な開発目標(SDGs)もある中でジェンダー平等の共通認識ができてきたから、多くの人が声を上げたのだと思う」

 「ただ共通認識が全ての人にあるわけではない。女子学生からは、親や親戚から早く結婚して子どもを持つよう勧められ、自分たちが学んでいる内容と、現実の地域社会にギャップを感じていると聞いた。学生たちには、結婚や出産などのライフプランはどの選択も自分で決めることができ、何事も『決め付けない』ことが大事だと話している」

 -新体制が船出し、一件落着したと考えるか。

 「失言した人を一斉に責める風潮が続いている。今回、発言そのものはよくなかったが、人格攻撃ではなく、どうすれば状況がよくなるか生産的に考えられる批判の仕方を、社会は身に付けなければならないと思った」

 「橋本聖子新会長体制で何かあったとき、『やっぱり女はだめだ』といった言葉で批判する人がいるかもしれない。しかし、人の違いは性差というより個人差によるものが大きいと世の中は思い始めている。女性だからといって皆同じ意見ではないし、違う意見だからといって対立の構図で見るのもやめてほしい。性別には当然配慮すべきだが、性別は人の一つの側面。経験や能力など、その人を形成するさまざまな要素を見て評価することが重要だ」

 -女性への配慮や支援が必要な場面は依然としてある。新型コロナウイルス禍で困窮や暴力などに悩む女性の姿が顕在化している。

 「『女性活躍推進』の陰に隠れ、地域社会で解決していなかった、女性を取り巻く問題を放置するべきではない。宮崎でも女性に非正規労働が多く解雇されやすいし、ひとり親の家庭は生活が厳しくコロナ禍で働く日数が制限され収入が減ったりしている。あらためて取り組むべきだ」

 -今回の問題を宮崎で教訓として生かすなら。

 「SDGsはジェンダー平等を掲げ、地域や世界が取り組んでいる。この大きな流れの中で性別による決め付けはナンセンスだった。宮崎でそういうことがないかよく考えてみることが大事。自分の身の回りでそういう状況がないかと。例えば15年ほど前は、各種審議会で女性が発言しづらそうな様子もみられた。今は多くが男女半々程度になっており、活発に発言されている。だが議会となると女性は極端に少ない」

 「会議や組織に若者、女性、障害者などさまざまな立場の人が参画し、意見が言えるのが理想。何のために会議があるのか。声の大きい人の考えを通すためではなく、皆の意見を吸い上げ、社会や状況をよりよくしていくためではないか。今回の発言で水を差された感はあったが、多様性を目指してきたここ数年の方向性は変わらない」

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