<社説>高2自殺調査報告 「許されない指導」根絶を

 県立高校の運動部主将を務める2年の男子生徒が今年1月に自ら命を絶った問題で、第三者による調査報告書は「部活動顧問との関係を中心としたストレスの可能性が高い」と結論付けた。 生徒は部活動顧問の教諭から「キャプテンを辞めろ」など日常的に叱責を受け悩んでいたという。生徒の人間性や人格を損ねたり否定するような発言や行為は、パワーハラスメントに当たる。

 教員の不適切な「指導」で精神的に追い詰められ生徒が自殺する事案は全国で相次ぎ、「指導死」と呼ばれている。言葉の暴力や体罰など「許されない指導」を教育の場から根絶しなければならない。

 今回の調査は弁護士と公認心理師で構成する調査チームが当たった。だが、調査期間が限られているため全容を解明したとは言い難い。さらなる調査と同時に、全県を対象にした実態調査を早急に実施し再発防止策を示してもらいたい。

 調査報告によると、自殺した生徒には顧問から精神的に負担を強いる言葉が用いられた可能性があるという。学園祭の際も顧問の指示で古紙回収作業を行ったため、クラスの出店に参加できなかったことに強い憤りを示していた。生徒との連絡にLINEの無料通話アプリを使用し、やりとりが夜中まで続くことがあった。それが生徒のストレスの要因になったという。

 顧問は部活動の「やりがい」や「楽しさ」よりも、「勝つこと」を重視する勝利至上主義に陥っていた。

 運動部の活動は本来、学校教育の一環として、スポーツに興味と関心を持つ同好の生徒の自発的な参加で行われる。その際、生徒の自主性が尊重されるべきだ。顧問の行為は、強い立場を利用して生徒を支配する構図であり、明らかに指導を逸脱している。

 高校側にも問題はある。部活の運営や指導を顧問の教員だけに任せていたため、「許されない指導」を把握できていなかった。このため報告書は「当該部顧問一人の問題と捉えるのは不適切」と指摘している。

 文部科学省の「運動部活動での指導のガイドライン」に明記されているように、情報の共有をはじめ、複数の学校関係者が部活の運営に関わり、管理職による巡回方法を見直すなど組織として対応することが求められる。

 警察庁のまとめ(確定値)によると、2020年の小中高生の自殺者数は統計のある1980年以降最多の499人に上った。高校生は前年比60人増の339人で全体の67.9%を占める。

 県内の高校生の自殺者は、20年度を含む直近5年間で3人だった。

 児童生徒の心のSOSを察知し迅速に対応する環境づくりが急を要する。児童生徒の可能性を伸ばすはずの学校を、未来を奪ってしまう場にしてはならない。

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