【高齢者の関心呼ぶ二地域居住】谷口教授が提言「地場産品の購入など街を知ることから始めましょう」

オンラインで講演する谷口 守教授

今月9日にオンラインで開催された全国二地域居住等促進協議会・設立記念シンポジウム。この日、反響を呼んだのが谷口 守氏(筑波大学システム情報系教授)の講演でした。

無関心層をどう刺激するかがカギとする谷口教授のさまざまな提言は、これから二地域居住が普及するかどうかに影響を与えそうです。

そこで、当サイト編集部では二地域居住に関する疑問点を挙げながら、谷口先生からのメッセージをご紹介します。

地方から都市部へ移住する双方向の動きも

<全国二地域居住等促進協議会 基調講演>
演題:二地域居住のこれまでとこれから-Beyondコロナ社会に向けて-
講師:谷口 守 筑波大学システム情報系 教授

【❑は当編集部の問題意識や疑問点です。以下、敬称略】

❑人が密集する都会のオフィスを離れ、観光地などで休暇を過ごしながら働く「ワーケーション」というライフスタイルも普及してきました。

谷口 社会が非常に変化し、ワーケーションなどメニューが多様化していますので、2地域という言葉にこだわらなくてもいいでしょう。
最近はいろんな街をスキップして住むなど、複数の拠点で生活する人たちも増えています。
そして、都市部から地方への一方通行というわけではなく、逆に地方から都市部の空き家へ入居する人たちもいる。
都市部と地方の双方向という流れも出てきました。

人口移動は千葉県・茨城県など首都圏にとどまる

❑二地域居住に関心のない人たちには、どうすれば関心を持ってもらえるのか。

谷口 二地域居住や移住へといきなりステップアップしてもらうのは大変です。
最初はたとえば地場産品を購入してもらうとか、寄付していただくとか、また何度も行ったり来たりするうちに地元の人たちと仲良くなって、二地域居住へと自然にシフトしていくスタイルが賢明だと思います。

❑東京都の人口は減っていると聞くが、どこに移動しているのでしょう。

谷口 東京都の人口は減っていますが、注意しないといけないのはどこに行っているのかということ。
実は千葉県や茨城県などへ移っているんです。
本当のローカルなところには人が移動していない、という状況が見えてきました。
結局は、首都圏だけが大きくなるという現象が起きています。

スーパーや診療所、小学校等の充実が地方創生のカギ

❑それなら、ローカルな地方はどうすればいいのか。

谷口 北海道の厚真町(あつまちょう)がお手本となる自治体の一つです。
子育て支援住宅を重点的にやられたり、企業や農家への支援といった政策が功を奏しています。
そして、全国の自治体の統計分析によると、スーパーマーケットや診療所、小学校などの充実度合いがやはりプラスに効いていて、基本的な生活サービスが充実していることが重要です。
特に教育面では、高等学校よりも小学校がきちんとある自治体は人口が減っていないケースが多い。
また、道路などの交通インフラも、やはり地域を支えるうえで大切なことが統計データなどから分かってきました。

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【編集部コメント】
コロナ禍でのテレワークの普及もあり、二地域を拠点に生活する「デュアラー」が増えています。
デュアラーや二地域居住について、今話題の『デュアラー』とは?『二地域居住』について詳しく解説!の記事でまとめています。

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