陸上&スキー・村岡桃佳 前人未到の“夏冬二刀流”挑戦へ「可能性がある限り続けたい」

西武戦の始球式を務めたこともある村岡

【Restart パラヒーローズ その壁を乗り越えろ(28)】2018年平昌大会パラアルペンスキー女子大回転(座位)金メダルの村岡桃佳(24=トヨタ自動車)は、パラ陸上女子100メートル(T54)で約5か月後に迫った東京大会出場を目標に掲げている。異例とも言える“夏冬二刀流”への挑戦。雪のヒロインがあえていばらの道を歩む理由とは――。

「陸上競技を真剣に取り組んでみたい」。村岡にとって陸上は、新たな道を切り開いてくれた特別なものだった。4歳の時に横断性脊髄炎を発症。車いすで小学校に通う中で「周りの友達と違う自分に、幼いながらに引け目を感じていた」という。そんな時、父親に誘われて足を運んだ車いすスポーツの体験イベントが大きな転機となった。小学2年で初めて自分と同じ境遇の子たちに出会い「少しずつ自分が変わっていった」と心情が変化。気持ちが前向きとなり、陸上やテニス、スキーなどに熱中するようになった。

中学2年からはスキー一本に絞ると、17歳で14年ソチ大会に出場を果たした。18年平昌大会では金メダルを含む5個のメダルを獲得し、紫綬褒章を受章。19年W杯では年間総合優勝を果たし、世界屈指のプレーヤーに成長した。しかし、村岡の胸中は複雑だった。「なんとなく陸上競技をやめてスキー一本になってしまった」。20年には東京で自国開催の祭典が開催されることもあり「すごく迷ったけど、やっぱり陸上競技にもう一回真剣に取り組んでチャレンジをしてみたい」と一念発起。陸上とスキーの“二刀流”を決断した。

当初は20年の夏まで陸上に専念し、その後はスキーで北京大会を目指すプランだった。ところが新型コロナウイルス禍の影響で東京大会が1年延期に。一時は陸上を断念することが頭をよぎったものの「延期になったところで、可能性がある限りは続けたいなって思った」。現在は陸上とスキーの練習を交互に行う日々を過ごしており「コンディションを合わせるのが難しい」と苦笑いを浮かべながらも「自分が今できることを精一杯やる」と意気込む。

「東京大会に出場して決勝まで残る。北京大会でも2大会連続のメダル獲得に向けて頑張っていきたい」。前人未到の挑戦へ、村岡の目に迷いはない。

☆むらおか・ももか 1997年3月3日生まれ。埼玉県出身。4歳の時に横断性脊髄炎を発症し、車いす生活となった。中学2年から本格的にスキーを始め、2014年ソチ大会に出場。18年平昌大会では、金メダルを含む5つのメダルを獲得。19年5月からは、陸上への挑戦を決意。20年1月には、女子100メートル(T54)で16秒34の好タイムをマークした。現在はスキーとの二刀流に挑戦。東京大会出場&北京大会メダル奪取を目指して練習に励んでいる。

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