初代主将が語る阪神Womenの実情 プロと変わらぬ練習環境「申し分ない」

ロングティーを行う選手たち【写真提供:阪神タイガース】

現状は平日は週に3回、午前と夜の2班に分かれて2時間練習

阪神が立ち上げた女子硬式野球クラブチーム「阪神タイガースWomen」の三浦伊織主将が、Full-Countのインタビューに応じた。女子プロ野球リーグで前人未到の通算500安打を達成したレジェンドが、女子野球普及に懸ける思いを語った。全3回の最終回は目指すチーム像について。

平均年齢23.8歳と若いチームの主将を快く引き受けた三浦。全体練習初日のランニングメニューではトップでゴールして、野原祐也監督を「さすが」とうならせた。「背中で見せていくスタイルでずっとやってきましたから。毎日、筋肉痛ですよ。みんなで追い込むメニューは久しぶりなので」と語る表情は心底楽しそうだ。

現在の練習場所はファーム本拠地の鳴尾浜球場と甲子園の室内練習場。平日は週3回、午前と夜の2班に分かれて2時間の練習を行い、週末の1日を全体練習に充てている。「入る前はクラブチームなのであまり練習できないかなと思っていましたが、申し分ないです」とプロ時代と遜色ない練習環境に感謝する。

個人成績によって年俸が変わるプロからアマチュアにフィールドを移し、三浦の意識も変化した。「これからは、自分の経験を下の子に伝くようにやっていけたらと思っています。個人タイトルなんてないですから、チームが勝つためにはどうしたらいいのかを考えてやってきたいです」と語る。

NPB球団初の女子クラブチームとして昨春に誕生した西武ライオンズ・レディースは、全日本女子公式クラブ選手権大会で初出場初優勝した。阪神タイガースWomenにも1年目から快進撃の期待がかかるが、三浦が描く理想のチーム像とはどのようなものだろうか――。

「阪神タイガースWomen」の三浦伊織主将【写真提供:阪神タイガース】

日本代表での経験「士気を高めていくことの大切さを当時の監督から教わりました」

「全日本で優勝という形が一番だと思うのですが、どちらかというと、野球をやっている女の子たちがタイガースに憧れを持ってくれるようなチームづくりをしたいと思っています。まずは“野球が大好き”という思いがプレーを通してしっかり伝わるようにしていきたいです」とイメージを明かした。

主将として重視しているのは、コミュニケーションだ。「私が参加している平日午前練習のメンバーとはある程度話をしているので、週1回の全体練習の時には平日夜の練習に参加しているメンバー中心に会話していこうと思っています。お互いどんな選手なのか知っていくことで、いいチームになれると思います」と自ら若い選手たちに声をかけて回る。

まっさらな状態からチームを作り上げていく作業は、4度参加した日本代表で身をもって経験している。「何回も合宿を重ねて、チームワークができて、士気を高めていくことの大切さを当時の監督から教わりました」と振り返る。ワールドカップ5連覇中と無敵を誇るマドンナジャパンと同様の手法で、新しいチームを束ねていく。

阪神タイガースWomenでの三浦のミッションは、チームづくりだけではない。2月から球団アカデミーのベースボールスクールのコーチに就任。月曜日から金曜日の午後2時から幼児クラス、1・2年、3・4年、5・6年の4コマを受け持っている。

「女の子も何人かいます。私たちはどちらかというと、野球をやっている女の子を増やすことが仕事だと思いますので、どんどん増やしていきたいです」。三浦を含めて7選手がアカデミーコーチの仕事に携わる。“憧れのお姉さん”として野球少女の発掘と育成にも全力を注ぐ。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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