骨折でさらに覚醒!? SVGが17番手からの大逆転含む、週末3連勝の離れ業/RSC第2戦サンダウン

 2021年のRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップ第2戦サンダウン・スーパースプリントが3月20~21日の週末に開催され、マウンテンバイクでのトレーニング中に鎖骨骨折のアクシデントに見舞われていた開幕勝者“SVG”こと、シェーン-ヴァン・ギズバーゲンが異次元のパフォーマンスを披露。

 土曜予選で17番グリッドに沈んだレース1では、戦略を駆使して大逆転勝利を飾ると、日曜の予選ではポールポジションを手にし、雨がらみのレース2、レース3も制して週末“クリーンスイープ”を達成。1994年以来の『開幕5連勝』を記録するなど、コンディションを考慮しても圧巻の離れ業を演じてみせた。

 開幕戦パーフェクトで300ポイントを獲得し、順風満帆のシーズンスタートを切っていたTriple Eight Race Engineering(トリプルエイト・レースエンジニアリング)のWエースだが、その直後にアクシデントで鎖骨を骨折する不運に見舞われ、すぐさま緊急手術を受けることに。

 左鎖骨に沿ってプレートを埋め込む措置を受けたSVGは、出場予定だったFanatec GT World Challenge Australia Powered by AWS(ファナテックGTワールドチャレンジ・オーストラリア/GTWC)開幕戦を欠場する決断も下し、このRSC第2戦に向け療養を続けてきた。

 こうした怪我がつきもののMotoGPライダーたちと同様、最新の医療措置を導入してきたSVGに対し、チームも万全のバックアップ体制を敷く。第2戦の週末最初の走行セッションで状態を見極め、競技参加が難しいと判断された場合は彼の耐久カップ・ペアであり、そのGTWCオーストラリア開幕戦で連勝を飾ったガース・タンダーを起用するスクランブル体制を採った。

 しかし当のSVGは金曜FP1でセッション早々にフライングラップを敢行すると、1分08秒5061という2019年サンダウン500でのファステストラップに匹敵する好タイムをマーク。直後の無線では「怪我による痛みはほとんど引き起こされていない」と報告し、僚友の7冠王者ジェイミー・ウインカップに次ぐ2番手タイムでセッションを終えた。

 これで正式に週末のレース参戦にGOサインの出たSVGだったが、10分×3セッションの予選ではタイムをまとめきれずに17番グリッドに沈む厳しい展開に。パドックの誰もが「今回ばかりは、療養明けのリハビリ・ラウンドになる」との観測を持っていた。

 そのまま土曜午後にスタートが切られたレース1は、ランキング2位のチャズ・モスタートが、Walkinshaw Andretti United(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド/WAU)のホールデン・コモドアZBで今季初ポールから発進したものの、蹴り出しで遅れその優位な立場を活かせず。フロントロウに並んだTickford Racing(ティックフォード・レーシング)のキャメロン・ウォーターズ(フォード・マスタング)や、ウインカップのRed Bull Ampol Racing(レッドブル・アンポル・レーシング)ホールデンに先行される苦しい展開に追い込まれる。

高い縁石が特徴のサンダウンで、SVGの左鎖骨にどのような影響が出るか。チームも憂慮していた
ヘルメットやHANSデバイスの着脱も、スタッフのサポートがなければ不可能な状態での出場に
レース1で優勝争いを演じたモスタート、ウォーターズ、そしてウインカップの3台。その背後からSVGの97号車が迫る

■「マシンのなかでは素晴らしい気分になれた」とSVG

 すると直後の3周目にターン4でアクシデントが発生し、セーフティカー(SC)導入でレースは仕切り直しに。直後の7周目にリスタートが切られると、数周でピットウインドウが開き、まずはモスタートがアンダーカットを狙ってリヤ2輪交換でウインカップへの逆襲を狙う。

 その後もクリーンエアでの走行を求めた上位勢が早めのピット作業に向かうと、後方からみるみるポジションを上げて行ったのがSVGの97号車。36周、レース距離112kmの中間地点で5番手にまで浮上すると、タイヤ交換を引っ張りに引っ張る戦略で25周目には首位浮上に成功。このタイミングですぐさまリヤ2輪交換を行い、5番手でコースへと復帰する。

 誰よりもフレッシュラバーの状態で残り10周を戦う体勢に持ち込んだSVGは、今季からDick Johnson Racing(ディック・ジョンソン・レーシング/DJR)に移籍したアントン・デ・パスカーレ(フォード・マスタング)を素早く仕留めると、モスタート、ウォーターズ、そしてウインカップが争うトップ3に迫っていく。

 残り2周時点で首位から陥落してきたモスタートにウインカップが仕掛けた隙を突き、一気に2番手へと進出したSVGは、ファイナルラップのターン1でウォーターズのインを一閃。そのまま通算43度目のトップチェッカーをくぐる劇的な勝利を飾った。

「優れた外科医、高圧室、僕の身の回りの世話をしてくれた素敵なガールフレンド、彼らが本当に僕を助けてくれた。今も痛みはあるし大変な数週間だったが、マシンのなかでは素晴らしい気分になれた。うまくいけば最高のショーになると考えていたが、最後までトライしたよ」と、そのドライビング同様マシンを降りてからも冷静に振り返った勝者SVG。

「ここの縁石は高く、その衝撃が怪我にどれほど影響するかは未知数だったが、痛みはそれほど悪化しなかった。ドライブしてもダメージはないし、明日も大丈夫だと思うよ!」

 その言葉どおり雨模様となった日曜午前の予選で、ウインカップを従えポールポジションを得たSVGは、路面ミューの低下にも助けられミックスコンディションのレース2でポール・トゥ・ウインを記録。そのまま最終のレース3も危なげなく制して、今季獲得可能な最大ポイント数の600点に到達。予選ボーナスポイントの5点も加えて、ランキング2位に浮上したウインカップに対し150点差と大きなリードを手にしている。

最終ラップのターン1に向けマスタングのインを奪ったSVGが、予選17番手からの大逆転劇でレース1を制した
この週末は、3レースともに表彰台争いに絡めなかったDick Johnson Racing(ディック・ジョンソン・レーシング/DJR)勢のフォード・マスタング
雨がらみの日曜はさらに盤石の強さを発揮し連勝。2021年開幕5連勝の記録的勢いを維持している

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