<大ヒット盤>w-inds.『20XX “THE BEST”』クールな楽曲を十二分に堪能

 デビュー20周年を記念したベスト盤。ジャケットは現メンバーの2人だが、全47曲中46曲は橘慶太、千葉涼平、緒方龍一の3人による作品で、その実績は一般的なアイドルの範疇を遥かに超越している。

 2005年までのDisc1は、慶太の変声期前から、安室奈美恵やISSAにも通じるパンチ力が垣間見えており、既に大器を予感させる。3曲目『Paradox』と13曲目『四季』を聴き比べてもその成長ぶりは明白だ。6曲目『Because of you』以降は、涼平と龍一の低音ラップも増えてより多彩になる。

 2010年までのDisc2は、前半にロマンチックな『十六夜の月』などJ-POPらしい作品もあるが、中盤以降は慶太の歌声がパワフルになり、洋楽並みの広い音域の楽曲が増えていく。特に、今井了介が提供したビートの強い『New World』とNe-Yoが提供したメロウな『Truth』の両A面シングルは、今後、海外でも再評価ブームが来そうなほど完成度が高い。もし、彼らがゴールデンの音楽番組に出まくっていたなら、こんなに高次元の音楽制作をしただろうかと一瞬考えてしまった。

 アニメの影響で世界的にも人気の『Be As One』(2011年)から始まるDisc3は、もはやカラオケで誰も歌えない楽曲が多数を占める。全編裏声の『夢で逢えるのに』や、早々とトロピカルハウスに挑んだ『Backstage』、さらに慶太が全曲の作詞・作曲・編曲を手がけた『We Don‘t Need To Talk Anymore』以降は、実験的要素も強く、聴き手の音楽レベルが試されている気もする。ラストの『Beautiful Now』での「光射す方へ」というシンプルなメッセージに少しホッとしたほどだ。

 ともあれ、音楽好きにはこれ1作で21世紀前半のクールな楽曲を、十二分に堪能できるはず。

(ポニーキャニオン 3CD通常盤 4000円+税)=臼井孝

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