田中将の復帰で広まった「フレーミング」 生半可な“小細工”は逆効果

太田(右)と話す田中将

【広瀬真徳 球界こぼれ話】田中将大投手(32)がメジャーから楽天に復帰して以来「フレーミング」という言葉を頻繁に耳にするようになった。これは捕手が際どいボール球を受ける際にミットを微動させ、審判にストライクを取ってもらう技術のこと。田中将が春季キャンプのブルペン投球で捕手・太田に指摘したことで話題になり始めたが、シーズン開幕を前に憂慮すべき点もある。複数球団の捕手がフレーミングを意識するあまり、過度にミットを動かすようになったことだ。

3月から始まったオープン戦を取材していると何人かの捕手が低めのボール球を捕球した際、何度もミットをストライクゾーンに入れる動作を見せていた。おそらくキャンプでコーチや同僚らとフレーミングを研究。実戦で試したのだろう。ただ、そのミットさばきを見るとお世辞にもうまいとは言いがたく、毎回のようにミットを動かすことで審判から露骨に首を振られる場面も見受けられた。これでは「際どいボールをストライクにしてもらう」という本来の目的を果たすどころか審判の心証を悪くしてしまうだけである。

そもそも捕手のフレーミングは以前から日本球界でも行われていた。だが、日本では「審判をだます行為」として好意的に捉えられず“小細工”として認識されていた。

少年野球教室で指導経験がある元プロ野球選手も先日、こんな話をしてくれた。

「日本では今も昔もキャッチャーにミットさばきを教える際には『構えたミットは捕球するまで極力動かさない』というのが一般的です。プロの捕手も小さいころからそうした指導を受けているので捕球後にミットを動かすことに慣れていない。そんな状況でフレーミングをしても効果は少ないですし、ボールを落としたりするミスが生まれるだけ。審判も『だまされないよ』と余計にストライクゾーンを狭める可能性もある。審判を敵に回す生半可なフレーミングをするぐらいならやらない方がいいでしょうね」

未熟な技量では審判を味方にするどころかミスを誘発しかねない。それがフレーミングの難しさ。もし公式戦で多用するのであれば覚悟のうえで実践すべきだろう。

☆ひろせ・まさのり 1973年、愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。

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