『緑の牢獄』完成披露試写会&黄インイク監督、ジャーナリスト野嶋剛、NDU井上修による特別対談を開催!

3月23日アンスティチュ・フランセ東京にて映画『緑の牢獄』完成披露試写会ならびに特別対談が行われた。 上映後の特別対談には本作の黄インイク監督、 昨年出版した『なぜ台湾は新型コロナウィルスを防げたのか』が話題になったことも記憶に新しいジャーナリストの野嶋剛氏、 伝説のドキュメンタリー制作集団・NDUの井上修氏が登壇し、 本作の魅力と制作秘話を熱くった。

まず対談冒頭、 野嶋氏は「西表島に炭鉱があったことは恥ずかしながら私も知らなかった。 このテーマを見つけてきた時点で既にニュース性がある。 地上の楽園といま思われている西表島にこんな過去があるという点でも意外性があり、 作品の価値を高めている」と本作のポイントを語った。

また、 試写会のお客様の反応としては「おばあの数奇な人生の境遇についてとても考えさせられた」「残酷ながらも映像の美しさが印象的だった」「シリアスな語りの中に現れるルイスの存在がとてもユーモラスだった」と様々な声があがった。

対談では黄監督は本作についてこのように語った「最初おばあと会ったのは2014年の頭でした。 最初は家族史や炭鉱のことを整理しながら、 勉強していて。 自分はおばあにとっては孫のような存在でした。 2015、 6年が一番映画で使われていて。 私が台湾語で話しかけると、 やっぱり孤独なところがあったからかとても喜んでくれて、 深いところまでインタビューで話してくれるようになりました」

また、 本作では主人公の橋間良子さんの養父に当たる楊添福さんの映像が使用されている。 これは伝説的なドキュメンタリー集団・NDU(日本ドキュメンタリストユニオン)が1970年代に復帰前後の沖縄を記録した名作『アジアはひとつ』の中に、 収められた映像と肉声である。 黄監督は数年前から元NDUメンバーの井上修氏と交流し、 50年の歳月を超えて、 西表の台湾移民そして日本ドキュメンタリー史の鉱脈を受け継いだ。

井上氏「びっくりしたんですよ。 50年前作ったものが、 こうして若い人の作品で大切に使ってもらえて。 (主人公の養父の映像を)見つけただけで、 作品がうまくいく証ですよね。 ドキュメンタリーにはそういう念力みたいなもんがあるんですよ」

また井上氏は独特の言い回しで黄監督を評した。 「黄さんはね、 若いけどよくやるね。 こうやってひとつ良いテーマを見つけたらもう四つ相撲というより押し相撲だね。 これからどんどん勢いがついて止まらなくなるよ」

喧々諤々の対談は時折笑い声も挟みながら最後は以下のように締められた。

野嶋氏「黄監督の本作を撮るモチベーションは一体何ですか?」

黄監督「最初は八重山の台湾人という、 あまり知られていない謎の多いグループへの好奇心が根本にはありました。 そこからどんどん移民や歴史という大きな枠組みから家族や個人への興味が強くなっていきました」

野嶋氏「沖縄というテーマは日本と台湾という形で捉えることもできますが、 八重山というのはさらにその沖縄と台湾の狭間、 西表というのは八重山と台湾の狭間の中の狭間にある形で、 重層的に問題が見えてくる場所でもあります。 そこに光を当てた作品を完成させた黄監督に敬意を表したいと思います」

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