引退・鶴竜が明かした胸中「気持ちが少しずつ削られて…」

オンラインで会見を行った鶴竜

大相撲春場所12日目(25日、東京・両国国技館)、24日に現役を引退し、年寄「鶴竜」を襲名した横綱鶴竜(35=陸奥)がオンラインで会見を行った。

引退発表から一夜が明けた鶴竜は「何かから解放された。ホッとしている? そうですね。それが今の率直な気持ち」とすっきりした表情で語った。

昨年は5場所のうち4場所で休場し、横綱審議委員会から「注意」を決議された。1月の初場所も持病の腰痛のため全休。春場所で進退をかける意思を示していたが、場所前の稽古で左太ももを負傷して5場所連続休場となった。

最終的に決断したのは一昨日の夜。「ここ最近ずっとケガで土俵に立つことができず、たくさんの方に応援してもらっていたのでもう一度土俵に立つところを見せたいと思っていたけど、気持ちの面が少しずつ削られて、もう無理なのかなと。中途半端な気持ちで上がるわけにはいかないので引退を決めた」

当初は夏場所(5月9日初日、国技館)の出場を目指すなど、現役続行にも意欲をのぞかせていたが、体が言うことをきかず「これからの人生でも体は大事。家族に話し、親にも相談してもういいのかなと」と周囲の声も後押しになった。

2001年に来日し、井筒部屋に入門。「人間として、男としても成長させてもらった」と振り返る自身のキャリアで、最も印象に残っている場面は05年秋場所で十両昇進を決めた瞬間だったという。後に新入幕、三役、横綱、初優勝を経験することになるが「関取になれたのはうれしかった。最初の目標を達成したのは特別なこと」と話した。

14年春場所後、第71代横綱に昇進した鶴竜は「上がった当時は先輩の意見を聞いたり、ビデオを見たり研究したけど、あるとき気づいた。鶴竜を認めてくれて横綱にしてもらったわけだから、ありのままでいいんじゃないかと。それからは横綱像を考えなくなった」という。

白鵬、日馬富士、稀勢の里(現荒磯親方)を含めた「4横綱時代」の一角を担った。「負けないぞという、張り合いができる人がいて感謝」

今後は後進を指導する立場になる。「人に教えるのは大変難しい。どうすれば強い力士を育てられるのかを勉強していかないといけない。自分の経験を押し付けるのではなく、協会の看板を背負っていける力士を育てたい」。心優しき横綱が新たな一歩を踏み出す。

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