監督が職を失う一番の理由…元選手が語る“共感力”の重要性

 喜怒哀楽が詰まっているサッカーは、その予測不可能性において人生を模範している。優秀な選手、優秀な監督、より多くの投資をすれば良いチームになるというのは机上の空論だ。

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 イギリスメディア『Skysport』は、戦術、チーム選び、フォーム、そしてデータはサッカーの上で非常に重要だが、選手が抱える不安や恐怖は軽視されがちと報道。メンタルヘルスや心の弱さを認める意識は改善されているものの、感情がパフォーマンスの妨げになる考えはほとんど語られていないと伝えた。17年間で22クラブに在籍して500試合以上に出場したドリュー・ブロートン氏は、一流の監督になるには選手の感情や精神面を向上させる事が使命だと説明している。

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「私は調子が悪い時に自分に目を向ける傾向だったから、立ち止まって何が起きているか問いかけていた。だけど監督からフォーム低下を問われた事はなかったよ。ペップやクロップ、ロジャースは“共感”という共通の特徴がある。“共感”は相手の感情を読み取る能力の事で、“同情”とはまた異なる。その能力を発揮すれば、選手との関係と共に成果を上げる事ができると思う」。

「その関係が構築されるとどうなるか。その選手は監督のために走ったり戦ったりする様になる。本当にシンプルな事なんだ。ドレッシングルームにいる全員は、戦術を考える前に屈辱を恐れているんだ。優れたコーチは何より先にそれに対処する。最高の関係とは互いに正直になることで、感情を隠したり忍び足で歩く様な関係ではないんだ。誰もが目に見えた結果を求めるけど、選手たちは監督に人間だと感じてもらいたいし、繋がりを切望している。だけど多くの監督がそうであるように、選手の苦労している感情を一切遮断してしまうんだ」。

「私が現役時代の頃は、プレッシャーがキャリアを不自由にさせていた。まず第一に私はとても繊細で、感情的になることもある。私が共に仕事をした監督たちは、私が昔ながらの人間でとてもタフな選手だと思っていたようだった。だけど実際の私は舞台裏で傷ついていたし、全ての感情を抱えこんだ。それがキャリアを混乱させていたし、常に“私は何者なのか”と考えていた。ピッチで失敗したら自分を責め、頑張って演技しても心が折れてしまう。失敗して、自分を偽り、心が折れる。それが私の17年間だった」。

元選手が語る監督が辞める一番の理由※Photo Catherine Ivill

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