「墨汁とお湯で…」開幕戦も万全! 巨人・原監督 通算15季目で到達した “和の儀式”

今季も采配が注目される巨人・原監督

さあ、開幕だ。セ・リーグ王者の巨人は26日に本拠地・東京ドームでDeNAを迎え撃ち、2021年のペナントレースが幕開けする。至上命令のリーグ3連覇と9年ぶりの日本一へ、原辰徳監督(62)はどんな手綱さばきを見せるのか。球団史上最多の1096勝を積み合上げてきた「勝負の鬼」には、精神統一を図る独特な〝儀式〟が誕生している。

開幕を目前に控えた25日にチームは本拠地で最終調整を行った。今季は2年ぶりに公式戦143試合が復活。ただ、例年と異なる特徴の一つは、今夏に東京五輪が予定されている点だ。7月19日から8月12日まで公式戦が行われない「中断期間」があり、この変則日程をどう捉えるかもポイントとなる。

原監督は「少し期間が空いているという点においては、そこ(前半戦)の間、突っ走るという考え方は間違ってないかもしれませんね」。休止となる約1か月間を再調整や再充電の期間とすれば、7月14日のヤクルト戦(東京ドーム)までの前半戦89試合を全力で駆け抜けることができる。そして、後半戦が始まる8月13日の中日戦(東京ドーム)から再び全開モードでロケットスタートを切り、一気に優勝を決める。いわば〝2段ロケット〟を実現できるかもカギとなりそうだ。

監督通算としては15季目に突入。巨人内の実績で、もはや右に出る者はいない。それでも慢心は一切なく「受けて立つ気はサラサラないですね。昨年はセントラル・リーグで勝つことができた。しかし、そんなものは過去の話。横一線でまたスタートが始まる。挑戦し、戦いを挑む」と強調した。

そんな数え切れない修羅場をくぐり抜けてきた指揮官には、精神を整える〝儀式〟を取り入れている。春季キャンプ中には、こんなことを明かしていた。

「朝、サインを書くの。墨で色紙にね。朝はとってもいい」。5時前後に起床し、静かな環境の中でまずは心を整える。自ら筆を取り「和と動」と記すわけだが、墨にもこだわるのが〝原流〟だ。「墨汁があるでしょ? それに少しお湯を足す。〝俺流〟なんだけど、水よりは溶けやすいだろうというか…。それが準備運動だよ。何となく静かに(心身の)統一ができる」。墨汁をそのまま使うことも、水を足して硯で刷っても文字は書けるが、あえてお湯を足すことが〝ミソ〟だ。

筆のノリもまるで変わってくるそうで「墨汁でパーッと書くのとでは全然違う」という。そうして心身を落ち着かせながら頭もスッキリさせ、いざ試合が始まれば、冷酷なまでの「勝負の鬼」と化す。

「開幕戦の前日、あるいはその日というのはやっぱり格別ですよ。しかし、終われば結果がどう転んだとしても143分の1である。しかし、今日とか当日は、そうは思えないところに開幕戦の妙というものがある」

この先、どんなドラマが待ち受けているのか。原巨人の長い戦いが始まる。

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