鷹16年ドラ1右腕はベールを脱ぐか? パ・リーグ6球団の今シーズン注目株を特集

ソフトバンク・田中正義【写真:福谷佑介】

ソフトバンクの杉山、田中ら剛速球を武器にする右腕たち

今季も無事にキャンプを完走したパ・リーグ6球団。オープン戦を経て、いよいよシーズンインへ準備も進む。キャンプでは、主力選手を中心としたメンバーやルーキーが注目されがちだが、当然ながらB班(チームによってはB組/2軍呼び)スタートながら1軍の出場機会を勝ち取った選手や、A班(A組/1軍)でのアピールに成功し、シーズンでの活躍につなげた選手もいる。今回は2年目以降の選手を中心に、昨年と今年のキャンプイン時点での顔ぶれを比較しつつ、来たる2021年シーズンを予測していきたい。

【ソフトバンク】鷹の投手陣に豪腕がまた1人、かつてのドラ1右腕は覚醒なるか

例年、次々と新たな戦力が誕生しているソフトバンク。杉山一樹投手は昨年はB組スタートだったもののシーズン中は1軍でも活躍した。その持ち味は恵まれた体格から放たれる150キロ超の豪速球。シーズンでの登板数が少なかっただけに、「SMBC日本シリーズ2020」で投じた157キロの速球はセ・パ両リーグのファンに衝撃を与えた。今季はA班キャンプに帯同しており、開幕ローテーション入りも期待される立場。千賀滉大投手に続く豪腕投手の台頭に注目したい。

一方で、今年のB組キャンプでは田中正義投手を挙げたい。プロ4年間で通算11登板と苦しい状況が続いたが、昨季はファームで最速156キロを計測。持ち味の快速球を取り戻しつつある。藤本博史2軍監督も、B組で目立った選手の1人として名前を挙げているだけに期待値も高い。2016年のドラフトでは5球団が競合した逸材が、ついにそのベールを脱ぐか。

【ロッテ】スピードスターに続く注目株は長距離砲

ロッテの新たなスピードスター・和田康士朗外野手も昨年は育成選手として2軍スタートだった。ただキャンプ中盤から1軍に参加し、練習試合などで俊足をアピール。確実に爪痕を残し、6月の支配下登録につなげた。それ以降の活躍は言うまでもない。71試合の出場ながらもリーグ3位の23盗塁を記録し、チームの2位浮上に貢献した。

ファームでは主力選手も多く調整を行っているだけに、1軍の中で和田と同様の成長曲線を描きそうな選手に注目したい。若き大砲候補・山口航輝外野手だ。昨年はB班でスタートし、シーズンでも1軍出場はなかった。一方で、ファームでは中軸として70試合に出場し7本塁打を記録。今季はキャンプインから1軍メンバー入りすると、オープン戦では4番を任されて適時打を放つなどアピールに成功している。主力級選手が仕上がりを見せていく今後は、藤原恭大外野手、安田尚憲内野手など実績のある若手選手との競争も激化しそうだ。

西武・田村伊知郎【写真:荒川祐史】

西武は投手陣が課題、田村は“勝利の方程式”に次ぐ存在になれるか?

【西武】B班での経験を1軍へ、昨季プロ初安打の西川愛也は実戦でアピール

田村伊知郎投手は、昨季B班スタートだったものの開幕1軍をつかみ取り、自己最多の31試合に登板。ビハインドでの起用が中心だったためセーブやホールドなどの記録こそつかなかったものの、昨季好調だった西武のブルペンを支えた投手の1人だ。今季は増田達至投手や平良海馬投手、森脇亮介投手らの「勝利の方程式」を昨季になった選手と共にA班でキャンプを過ごした。持ち味のボールを動かす投球で、より一層の勝利への貢献が期待される。

B班では西川愛也外野手が結果を残している。2月20日の練習試合(B班)ではマルチ安打、同28日にも猛打賞を記録。昨季はともにファームで切磋琢磨した川野涼多内野手がA班で結果を残す一方で、B班スタートとなった西川もアピールを続けている。昨季は1軍デビュー戦で即プロ初安打を放っただけに、今季はさらにステップアップした活躍が求められる。キャンプ後から1軍に合流して結果を残している鈴木将平外野手や、ルーキーの若林楽人外野手などとのし烈な外野手争いが展開されそうだ。

【楽天】ドラ1投手陣の豪華共演なるか、恵まれた体格の2人の右の長距離砲も覚醒前夜

今季はドラフト1位で大学No.1左腕の早川隆久投手が加入し、2006年ドラフト1位の田中将大投手との「新旧ドラ1」の共演も予想される楽天投手陣。その一方で、昨季2軍スタートから活躍の場を掴んだのが安樂智大投手だ。中継ぎの役割に専念した昨季は自己最多の27試合に登板し、3年ぶりの勝利も挙げている。先に挙げた2人に加え、先発では則本昂大投手、抑えでは松井裕樹投手とそれぞれの役割にドラ1が名を連ねる状況。2014年のドラ1は中継ぎとして投手陣を支えていきたい。

今季のB班では内田靖人内野手、岩見雅紀内野手、それぞれパンチ力のある2人の飛躍が期待される。内田は昨季の新人王・平良海馬投手の155キロの豪速球をライトスタンドに突き刺す一発を含む2本の満塁弾。一方の岩見はレフトスタンドへの弾丸ライナーの本塁打でプロ初安打を記録し、大砲としての片鱗を見せた。今季は日本ハムから同じく長打力に優れた横尾俊建内野手がトレードで加入。内田が26歳、岩見が27歳、横尾が28歳と年齢も近い。三つ巴の競争から抜け出し、1軍の舞台で打力を発揮するのはどの選手か注目だ。

オリックス・宮城大弥【写真:荒川祐史】

日本ハムは若手が台頭 野村、上野らに期待

【日本ハム】「サード・野村」から1年。今年も期待の高卒2年目が

日本ハムのホープ、野村佑希選手も昨季は若手中心のB班スタート。ただ、花咲徳栄高校時代から注目されていた打棒を早くも発揮しつつある。練習試合でチームトップタイの3本塁打を放ち、高卒2年目にして開幕スタメンを射止めた。骨折によって悔しい離脱となったが、復帰後の本拠地最終戦ではそれを晴らすかのように2安打4打点の活躍。2021年は1軍でのキャンプを経てさらに成長した姿を見せられるか。

野村選手と同様に、早くも台頭してきた若手がいる。プロ2年目、20歳の上野響平内野手だ。ファームでのスタートながらもキャンプ途中から1軍に合流。練習試合では試合途中から遊撃手として起用される場面も目立った。高校時代からの持ち味だった守備は、昨季ファームで14失策と壁の高さを痛感したが、積極的な起用は成長を見せつつある証拠だろう。打撃では依然として課題が残る部分もあるが、1軍公式戦初出場の時を待ちたい。

【オリックス】昨季ファーム最多勝&プロ初勝利、才能開花した若手投手に注目

昨季の救援陣に新たに加わった頼もしい存在、吉田凌投手も2軍から活躍をつかんだ選手だ。高卒5年目、同世代の大卒ルーキーがプロ入りする重要なシーズンだったが、自己最多の35試合に登板し防御率2.17の活躍。今季は主力としてA班でキャンプインを果たした。帰ってきた守護神・平野佳寿投手の伝家の宝刀スプリット(SFF)、そして吉田凌の強烈な縦スライダーと、今季は「落ちる球」で必勝リレーを築けるか。

今季のオリックスのキャンプは中嶋聡新監督のもと、「A班」や「B班」のように1軍と2軍の区別を設けず、主力と若手を織り交ぜたA組~C組の班分けでキャンプをスタート。横一列でスタートした今季のキャンプを終えてシーズンに臨む今、注目したいのは2019年のドラフト1位・宮城大弥投手だ。昨季はファームでウエスタン・リーグ最多タイの6勝を挙げ、防御率も2.72とルーキーとは思えない安定した投球を見せた。シーズン終盤にはすでにプロ初勝利も記録している。先発陣には山本由伸投手、山岡泰輔投手ら屈指の右腕が並ぶだけに、先発左腕としてローテーションに食い込むことができるか。(「パ・リーグ インサイト」吉田貴)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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