阪神藤浪ら今季は7人が“初体験” 元NPBコーチが語る開幕投手を託す意味とは

中日・福谷浩司、阪神・藤浪晋太郎、ロッテ・二木康太(左から)【写真:荒川祐史】

藤浪が「結果を出せばチームも勢いづく」

プロ野球はきょう26日に開幕する。注目のひとつが開幕投手だが、今年は例年に比べるとやや様相が異なっている。12球団中7球団が、これまで経験のない投手を開幕のマウンドに送り出す。開幕投手の意義や意味合いなども時代とともに変わっているのだろうか。ロッテ、米大リーグ・インディアンスなどで日米通算234セーブを挙げ、オリックスやロッテで投手コーチを務めた小林雅英氏に聞いた。

12球団の開幕投手で最もサプライズと言えるのが、昨季1勝に終わった阪神の藤浪晋太郎だろう。長く続いた不振から昨季はリリーフに配置転換され、復調の兆しは見せた。オープン戦では3試合に登板して防御率2.77。上々の仕上がりを見せた右腕について小林氏は前年までとの違いを感じていた。

「今年はマウンドでの表情が、悪い時に比べると全く違うし、投球自体を見ても投げっぷりがいいですね。昨年の序盤までのように、おどおどしているようなところもないし、堂々と投げているように見えます。昨年までは球自体は悪くないのに、マウンド上で首をひねるような場面をよく見ましたが、今はそれもほとんどなくなっています」

藤浪が開幕投手を務めるのは今年が初めて。特別な舞台を任せることに意味があると小林氏は続ける。「特別な役割を与えられることで、今年の先発陣での立場が明確になります。重要な試合を任されるという意味で本人にも自覚、責任感が出てくるはず。ここでしっかりと結果を出せば本人はもちろん、チームも相当勢いづく可能性が高い。逆にダメなら、また立て直すのに時間がかかってしまうかもしれない。いずれにしても注目の一戦と言えます」

ロッテ二木は「エースになってもらいたい期待の表れ」

中日は昨年沢村賞を受賞した大野雄大ではなく、福谷浩司が初の大役を務める

「福谷は先発としての実績は少ないですが、昨年は先発としていいパフォーマンス(14先発、8勝2敗)を見せましたし、人選としては大いにアリでしょう。抑えの厳しい場面を経験してつかんだものを先発でも生かせていると思います。昨年の成績を考えると大野(雄大)が妥当という声があるのも分かりますが、あれだけ完投(10完投)して疲労が残っている可能性もあります。負担を軽減するという意味でも、福谷というのは面白い考えだと思います」

ロッテは昨年、自己最多の9勝をマークした二木康太が初の開幕投手に指名された。昨年チームトップの10勝を挙げた美馬学ではなく、なぜ二木なのか。

「ソフトバンクに相性がいいこともあると思いますが、チームの期待の表れだと思います。昨年はエース番号の18番をもらって9勝。2桁勝利に一歩届かなかった。先発にとって2桁勝利は、周囲に認められるための条件のひとつと言えます。2桁勝って、本当の意味で投手陣の中心的存在、エースになってもらいたいという思いがチーム内にあるのでしょう。開幕投手に指名されたことで野球への取り組み方や価値観が変わり、自覚も出てくるはずです。オープン戦でもロッテの投手の中では一番いいパフォーマンスをしていましたし、期待できるのではないでしょうか」

開幕戦は「単なる143試合の中の1試合にすぎない」という人もいる。しかし先発マウンドを任されるということは様々な意味があるということだ。(大久保泰伸 / Yasunobu Okubo)

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