【MLB】「完璧でシーズンを迎えるのも気持ち悪い」ダルビッシュが見出す“ケガの功名”

パドレス・ダルビッシュ有【写真:Getty Images】

古巣レンジャーズ相手に3回3安打4失点4奪三振

■パドレス 11-10 レンジャーズ(オープン戦・日本時間26日・ピオリア)

パドレスのダルビッシュ有投手は25日(日本時間26日)のオープン戦で、古巣のレンジャーズを相手に3回3安打4失点4奪三振。2回からフォームのバランスが取れず「カッターとスライダー以外、投げられる状態じゃなかった」と苦しんだ。もっとも、踏み込む左足の着地点が深く掘れ、穴状になっていたことも一因となった。試合前にはティングラー監督が開幕投手としてダルビッシュを指名したことを発表。「まさかこの歳で任せてもらえるとは思わなかった」と、34歳の右腕は4月1日(同2日)のダイヤモンドバックス戦登板に意欲を見せる。

7球種を操るなど、ここまで多彩な変化球を駆使し、オープン戦2登板で1安打無失点7奪三振。好調を維持し、オープン戦最後の登板をいい形で締めくくりたいところだったが、4四球と7盗塁を許すなど荒れた投球となってしまった。初回は走者を三塁に置くピンチを切り抜け無失点。しかし、2回から降板する3回まで、バランスを欠いたフォームを修正できず、76球を費やして予定の5回に届かなかった。

「カッターとスライダー以外、投げられる状態じゃなかったので、かなり苦しかった。(許した7盗塁は)本気の牽制をしてなかった。今日はそれどころじゃなかったので。自分のメカニックをなんとかすることに集中していた」

昨季8勝を挙げ、日本投手初の最多賞を獲得。「四球を出すか出さないかは自分次第」とまで言い切ったダルビッシュが、ここまで制球を乱したのは、足元にも原因があった。相手左腕ベンジャミンの踏み込む足の着地点に大きな穴ができ、ダルビッシュの踏み込む左の踵あたりと重なった。「それでバランスが崩れてしまったというのはあります」とフォームは狂った。

防御率は.0.00から4.50へ、被打率は.063から.148へと悪化したが、この日の登板を開幕戦への好材料と捉えた。

「あまり完璧でシーズンを迎えるのも気持ち悪いと選手は思うもの。そういう意味では悪いものを全部出し切って良かったと思います。ちゃんと疲れを抜いて、今日の登板はもう忘れてしっかり調整したいと思います」

周囲の期待に本音「自分はそういうのを考えるとだめなので」

2017年のレンジャーズ時代以来、2度目の開幕投手を任されるダルビッシュ。34歳で任される大役に「本当に光栄に思います」と素直に喜びつつ、本音も漏らす。

「みんなからしたら期待もいろいろあるでしょうけど、自分はそういうのを考えるとだめなので。1球1球集中していけたらいいなと思います」

確かに、新しく同僚となった選手たちの期待は大きい。試合前の会見に応じたウィル・マイヤーズ外野手は7年前の不名誉な思い出を交えながらこう言った。

「レイズにいた時、僕からメジャー通算500個目の三振を奪ったんだ。ちょっと前までは速い球で押すのが投球の潮流だった。今は、タイミングを外す球が打者封じにより効果的とされる時代になっている。打者はオフスピードの球を打てないと生き残ってはいけないんだ。だから今年からダルビッシュと勝負をしなくていいのは、嬉しいね。後ろで守っている野手はみんなワクワクするし、彼がどんな仕事をやってくれるのかを本当に楽しみにしているんだ」

レンジャーズ時代の2014年4月6日、ダルビッシュは401と2/3イニングでメジャー通算500奪三振に到達。ケリー・ウッドを抜き13年ぶりの記録更新を達成した。その餌食になったのが当時レイズにいたマイヤーズだった。

新天地パドレスのエースとしてメジャー10年目のスタートを切るダルビッシュ有は、すでにチームの士気を高める存在になっている。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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