初戦と同じく1点を争う投手戦で、今度は2年生右腕が先発の大役を果たした。東海大相模の求が4回を2安打無失点。「緊張した中でも自分の投球ができて自信になった」。昨秋公式戦の登板がなかった16歳が、甲子園で輝きを放った。
一、三回と得点圏に走者を背負うも動じない。「真っすぐが走っている実感があった」とストレートで攻めていく。一回を詰まらせた捕邪飛などで切り抜けると、三回2死からは直球を伏線にした縦の変化球でバットに空を切らせた。
昨秋はベンチ外。「(関東大会でサヨナラ負けした)東海大甲府戦で何もできず負けたのが悔しかった。ああいう中で絶対に抑えられるように取り組んだ」。冬の鍛錬の成果は「3回までを区切りとしていた」という門馬監督の想定を上回る快投として実った。
中学校入学を機に神奈川へ。それまでは父の故郷の奄美大島で育った。特技は素潜り。「すごくきれいな所。ぜひ皆さんに来てもらいたい」。大自然に身を置きながら培ったボディーバランスこそが、持ち味の直球を磨く礎となっている。
この日、聖地に映えた黄色いグラブは、母方の叔父でプロ野球阪神コーチの平野恵一氏からもらったものという。偉大な叔父は桐蔭学園高で甲子園に出場、オリックスや阪神で内野の名手として活躍した。
「(平野氏の)甲子園への思いを大事にして投げた。絶対優勝するぞと伝えたい」。頂から見る景色は、奄美の海にも負けない美しさがあるはずだ。