ソフトバンク・石川が育成&都立校出身の初開幕勝利! 恩師が語る“原点”と“成長”

偉業を達成したソフトバンク・石川

ソフトバンクが26日のロッテ戦(ペイペイ)に8―2で快勝。7回を5安打1失点に抑える好投でチームを勝利に導いたのが石川柊太投手(29)だ。

開幕投手白星は育成出身選手で初の快挙。また、都立校出身でもドラフト制後初めてだった。「夢を与えられるような存在でありたいと思っています。育成出身でもやれるんだという気持ちは今でも大事にしてます。(都立出身としての活躍は)母校の同級生やOB、応援してくれる人だったりと喜んでくれる人がいる。自分がどうこうよりも、それが一番大きい」と笑顔を浮かべた。

都立総合工科から創価大をへてソフトバンクに育成入団。アマ時代は全国的に注目される存在ではなかった。そんな男が昨季は投手2冠に輝いた。今季は開幕投手を任され好スタートを切った。どのような原点があり、成長の軌跡をたどったのか。

アイドルグループ・ももいろクローバーZ(ももクロ)の大ファンを公言するなど、他選手とは違う雰囲気、親しみやすいキャラクターを持つ右腕。高校時代も体育会系とは異なる存在だったという。「背は高かったですけど、まだヒョロヒョロで、めがねをかけていて。(アニメの)『エヴァンゲリオン』やゲームが大好きで。まあ…。オタクでしたね(笑)」。

こう感慨深く振り返ったのが、石川の高校時代の恩師で、現在は都立足立新田を率いる有馬信夫監督(59)だ。圧倒的に私立が強い東京において、1999年に城東を東東京の都立勢で初となる甲子園に導いた“都立の名将”としても知られる。

当時から投げる球には目を引くものがあった。特に直球の質が抜群で、」1年時の投球を見て「このレベルの投手がよく都立に…」と驚いたという。2度目の甲子園を夢見たという。ただ、石川は故障に苦しむ。チームは善戦したが3年の春夏はベスト8。進学した創価大でもリーグ戦の初勝利は4年時だった。

現在の成長ぶりについて恩師はどう見ているか。「一つは彼の性格が大きいと思います。大学でもケガがあり2年間は体作りをしていましたし、ソフトバンクでも2年間はリハビリが中心だった。その中でも決して腐ったりするような性格ではない。淡々としていて、ブレないところがあるというか。彼の独特の世界観のようなものがある。そんな彼を成長させてくれた(大学やプロなどの)周囲の方々のおかげだと思います」。

昨年はコロナ禍でかなわなかったが、高校時代のチームメート同士は今でも仲が良く、オフには恩師も交えて集まるという。「これだけ有名になっても全く変わることがないんですよね」。都内で石川を先頭に歩き、どれだけ周囲に気づかれるかを試してみたり、右腕が応援する「ももクロ」について聞いた時の話などを楽しそうに振り返った有馬監督。

「とにかくケガに気をつけて少しでも長くやってほしい。それだけですね。僕も仲間に会ったりすると『あのピッチャー、俺の教え子なんだよ』って自慢するんですよ。僕に少しでも長く自慢をさせてほしいですね」。

今や球界を代表する投手の一人となった右腕のさらなる躍進に期待を込めた。

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