原巨人の〝超競争原理〟ついに首脳陣まで 作戦コーチが開幕ベンチ入りならず

開幕戦勝利を飾りファンにあいさつする原監督(左端)とベンチ入りコーチ陣

これも2021年版の原采配か。巨人は26日のDeNAとの開幕戦(東京ドーム)に8―7のサヨナラ勝ちを収め、白星発進を決めた。ナインにとっては長く険しいサバイバルレースが幕開けした一方で、ベンチ内ではもう一つの戦いが繰り広げられそうだ。桑田真澄投手チーフコーチ補佐(52)の電撃加入で一軍コーチが10人の大所帯となったが、ベンチ入りできるコーチは8人まで。さっそく発生した〝玉突き現象〟に隠された意図とは――。

最後はベテランのひと振りでケリをつけた。7―7の同点に追いつかれた直後の9回の攻撃で、代打・亀井善行外野手(38)が相手守護神の三嶋から劇的なサヨナラアーチ。開幕投手のエース菅野は6回3失点で降板し、昨オフに人的補償でDeNAへ移籍した田中俊に6打点を荒稼ぎされる強烈な恩返しを食らった。点を取っては取り返され、新クローザーの中川も2失点デビューと荒れ模様だっただけに、いっそう価値ある一発となった。

試合後、原辰徳監督(62)は「開幕戦にふさわしいというか、何て言っていいか分かりませんけども」としながら「最後、亀井が決めてくれたというのは非常にいろんな意味で大きいですね。いろんな人をカバーしたり、チームに明日への活力を与えてくれた」と賛辞を惜しまなかった。

二転三転しながらも、ひとまず1勝。ナインにとってはチームの勝利はもとより生き残りをかけた個人闘争も幕開けしたわけだが、今季の原巨人での競争原理は選手に限らず、コーチ陣にも働きそうだ。

年明けに桑田コーチの入閣が決まり、一軍のコーチは総勢10人となった。しかし、規定でベンチ入りできるコーチは8人までだ。この日は吉村禎章作戦コーチ(57)と杉内俊哉投手コーチ(40)がベンチ入りメンバーから外れ、攻撃時には指揮官の背後から村田修一野手総合コーチ(40)がサインの伝達役をこなした。

今後も10人体制を維持する限り、自ずと〝玉突き〟でベンチ外となるコーチが発生する。もちろん、原監督はコーチ陣全員に厚い信頼を置いているが、そこには指揮官流の常に危機感を持たせる意識づけが見え隠れする。実は、桑田コーチの加入についても、球団内では「阿部二軍監督は次期監督の筆頭候補だが、安心させない、アグラをかかせない狙いもあったのでは?」ともっぱらだ。それはコーチ陣に対してもしかり。ルールに則った措置とはいえ、必然的にベンチから外れるメンバーが出るとなれば、コーチ陣も油断や隙を見せられない環境となる。

最大の目標はリーグ制覇と9年ぶりの日本一奪回。ライバル球団のマークが厳しくなるなか、長丁場のシーズンを制するのは並大抵なことでは成しえない。

「勝負はどっちに転んでもおかしくないようなペナントレースになると思います。辛抱強く戦うんだという部分。反省する人もいるし、そういう意味では良かったと思います」。戦いはまだ始まったばかり。熟練指揮官はナインだけでなく、コーチ陣の緊張感を保たせながら荒波をこぎだした。

© 株式会社東京スポーツ新聞社