『涙』で『乳がん』がわかる!? 乳がんでつらい思いをする方を減らしたい 進む新検査 両側乳がんになりました79 

検査・告知・手術・仕事復帰・・・誰かのお役に立てればと綴ります。

今回は、神戸大大学院工学研究科(神戸市灘区)の竹内俊文教授にお話を伺いました。
『涙の中に含まれるエクソソームを調べることで、乳がんかどうかがわかる』
『涙の中に含まれるエクソソームを調べることで再発している』こともわかる可能性があるというのです。

実は、竹内先生とつながったのはTwitter。拙記事を読んでくださった読者の方が先生が新しい検査法について、クラウドファンディングをされている、とTwitterで教えていただきました。

その技術とは、試験紙で採取した涙で、がんがあるかないかを判定する方法「TearExo(ティアエクソ)法」。
涙の成分のうち、がん細胞から放出されて表面にがん由来のタンパク質がくっついた小胞「エクソソーム」を分析します。特定のタンパク質が多いと、がんの疑いがあり、最短10分ほどで検出できるといいます。乳がんの手術を受けた人も、その後のケアや再発チェックに利用できるのではないかと研究が進んでいます。

少し難しいのですが、エクソソームはさまざまな細胞から放出される100ナノメートルほどととてもミクロな世界の細胞外小胞の一つ。がん細胞から出るエクソソームは、がんの増殖や転移に関わることが研究で明らかになってきています。このエクソソームを涙から取り出して分析するんだそうです。

検査の方法は涙をとるだけ。ドライアイの検査で用いるシルマー試験紙を目尻に挟んで、数分。試験紙に涙がにじんで青色に変わってきたらOK。あとは自動分析計で涙の中のエクソソームを測定すれば、乳がんの細胞があるかないかがわかるそうです。

竹内先生『血液じゃなくて、涙でできる可能性が高いと感じていました。がん細胞からは特有のエクソソームが出ています。その表面には、放出元のがん細胞に由来するたんぱく質がくっついています。中身についてもがん細胞と同じ中身をもっててでていく。そこで、表面についたたんぱく質をターゲットにしています。』

乳がんのサブタイプとして、”HER2”タイプがあります。がん細胞にHER2たんぱくが含まれていることで知られています。そのがん細胞から出るエクソソームにも、HER2たんぱくが含まれるんだそうです。

4、5年前から研究が本格化し、乳がん患者とがんがない方のエクソソームの違いも判別することができました。つまり、乳がんの可能性があるないかが高い精度で確認できるようになったことを表しています。

今、注目しているのは、『術前・術後の違い』。乳がんは人によって違うので平均値をとってもうまくいかないだろうということで同じ個人の術前と術後は比べてどうなるのか、ということを調べたそうです。

竹内先生『乳がんは個人個人でパターン違うので、個人によって、3~4の検査するタンパク質も違う組み合わせを考えて調べています。今は、術後を主に考えているのですが、再発していないかどうか、チェックできるかをやろうとしているのです。』

現在はHER2は+3か、FISHで陽性の方がハーセプチンなどの分子標的薬の対象です。

竹内先生『HER2ネガティブの人でも、僕たちにはポジティブに見える人もいる。分子標的薬を使う線引きもこの方法は感度がいいので、効かないと思われていた人にも薬が効くようになるのではないのか、とこれからの研究次第ですが個人的には思っています。』

術前に値を測って、術後にも測る。術前の値まで近づいてきたら、マンモグラフィやエコーなどを併用しながら、検査をより強化する。そうすることで、少しでも再発しているのでは、という見えないストレスが減るのではないかという思いで取り組んでおられます。
マンモグラフィやエコーなど従来のものに代わろうとしているものではなく、足が遠のいてしまう病院にいった方がいいよ、というシグナルを出せればといいます。

阿久津:『再発してる、まではいえないけど、サインがわかる?』

竹内先生:『薬が効いているかとかも見えるのではないかと。臨床をやらないと確実なことはいえませんが。』
『患者さんが乳がんか、そうではないかを涙で診断するには、かなり臨床(研究)を多くしないと難しいのですが、乳がんと診断された方が、術前と術後でどう変わったかを調べて、それでも5年・10年のスパンはかかりますが、目で見えるような形にできたらいいなと。』

先生の原動力は地元のメディアで紹介されたときの電話。涙で乳がんがわかる、という放送を見た人から”術後で、いつまで検査をし続けるのかストレス。チェックできるものがあるとうれしい、いつできるの?”と。乳がんはステージ1、2で見つかると、いのちは助かる可能性は高いけれども、その後の治療が長い、ということが知られていないのではと感じているそうです。

私たちが求めているものに近いなあ、というのが印象。

がんと言われると、相当に重病に見えるけど、なんとか働ける。でもいつまで治療が続くかはわからないし、いつ治ったの?がない。治ったといえない、という微妙な感覚があります。
さらに毎回、血液検査で血管に針を入れますが、私の場合は両側でどんどんとれる血管が少なくなってきています。それで調べた腫瘍マーカーも万能ではありません。

竹内先生:『血液も針でとって、糖尿病の方が日々チェックされているが、原理上、涙もできるのではないかと思っている。血液は様々なものが入っているので装置が大変。一方で涙は不純物が入っていないので適しているが、センサーの感度がよくないとダメ。』

先生たちのチームで作り出したセンサーは従来の1000倍の感度だそうです。

工学部の先生の30年来のご研究は分子の鋳型をとる研究。(分子インプリンティング技術)金型や石膏でギブスをとるのと原理は同じです。

涙をとったあと、液体につけて、涙の中のエクソソームを取り出します。とても小さなエクソソームがはまりそうな型の穴をあけた基盤チップで吸い込み、あらかじめ入れておいた蛍光物質がエクソソームが入ると変化するので、その度合いを調べるそうです。

竹内先生の義理のお母さまも乳がんだそうです。退院したあとのケアの方が大事なのではないかと思い始めたそうです。

竹内先生:『腫瘍マーカーはがんを特定するわけではない。ちゃんと機能しているのは前立腺特異抗原(PSA)くらい。ですから、現状の血液検査で再発を見つけるのは無理なのではないかと感じています。』

私がこれまでお話を聞いていて感じたのはこの技術で妊孕性の問題を解決できないか、ということ。。手術後にどれだけそのがん由来の因子が減ったかを確認できたら、すぐに治療を始めなくても、上がり始めるまではホルモン治療を遅らせて妊活できたりする可能性があるのではないでしょうか?

竹内先生:『治療方針なので、命に別条がないという確信がないとそうはならないとは思うが、臨床研究で判断ができることになったら、患者さんの希望と併用しながら、一年間だけ治療までの間、余裕が出せるようになるのかどうか、調べてはみたいと思います。』

竹内先生:『たんぱく質は遺伝子からできるが、遺伝子だけではがん由来のたんぱく質ができるとは言えない。100%ではないので(変異のある)遺伝子をみてがんになるよねとしてと予防的切除は(研究者としては)違うなと思っている。(研究者としては)がん由来で発現したたんぱくがあるよ、まで言いたい。遺伝子は黙っていることがある。家族が乳がんで、遺伝性と診断されてもがんにならない方もいるので検査のオーバースペックにならないようにしたい。』

最近は、いろいろなバイオマーカーが注目されています。

『『線虫を使った尿でわかるがん、でどこかわからないけどがんがあるだと不安なのではないかと。私たちは、確実な物質をとらえていきたい。将来的には、きちんとがんを特定できる、という言い方ができたらいいなと。尿と唾液、さらに涙もできるようになれば、検診などで選択してもらえるので、受診する方にとっていいことになるかなと。』

竹内先生を含む研究グループは、その臨床研究費の一部に充てるため、クラウドファンディングにも取り組んでいます。

https://readyfor.jp/projects/TearExo?utm_source=pj_share_twitter&utm_medium=social

『精神的にはつらい、です。ドキドキします。毎日、夜中も確認してなにやってるのかわからなくなっている。』とおっしゃっていましたが普段は聞くことのない、患者さんなどみなさんのメッセージに励まされているそうです。

なんと!お話を伺ったすぐ後に、最初の目標の1000万円を突破!最初の1000万円は神戸大学内での臨床に。次のセカンドゴールはその他の協力施設でもできるようにするそうです。

熱い期待にプレッシャーを感じつつ、研究チームのみなさんは日々前進しておられます。

確実性、信頼性を確かめるために始まったこのトライは検診率や再発への恐怖、社会復帰への時間の短縮など様々な課題の解決への一歩、私も応援できればと思います。

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