阪神ドラ1佐藤輝が衝撃1号を打てたワケ… 専門家が分析「OP戦と攻め方変わっている」

阪神・佐藤輝明【写真:荒川祐史】

ヤクルトなどで通算21年活躍した野口寿浩氏が“捕手目線”で解説

■阪神 9-5 ヤクルト(27日・神宮)

阪神のドラフト1位ルーキー佐藤輝明内野手が27日、敵地・神宮球場で行われたヤクルトとの開幕第2戦に「6番・右翼」で出場し、初回の第1打席でバックスクリーン直撃の1号2ランを放った。プロ通算5打席目にして初安打が本塁打に。7回には一転して技ありの左前打を放つなど、4打数2安打2打点の活躍だった。現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で捕手として21年間活躍した野球評論家の野口寿浩氏は、今後予想される相手バッテリーの攻め方を含め、大物ルーキーの凄さを語った。

スケールが違う。初回に2点を先取してなお2死三塁のチャンスを作った阪神。ここで打席に入った佐藤輝は、ヤクルト先発の田口と対峙した。初球の外角低めスライダーを見送った後、2球目に同じスライダーがやや真ん中に入ったところを見逃さず一閃。打球は高い弧を描き、バックスクリーン上段に衝突した。

「オープン戦と公式戦では、やはり相手の攻め方は変わってきている。佐藤輝明の攻略は、内角球がカギ。本塁打は、内角へ行く前に打たれてしまった感じですね」。衝撃の初弾に対し、野口氏は“捕手目線”で分析する。

3回1死二、三塁での第2打席では、同じ田口から四球を選んだ。5回1死一塁での第3打席は、2番手右腕の今野に内・外角、高低をまんべんなく攻められた後、真ん中低め144キロ速球に見逃し三振に倒れた。しかし、7回2死走者なしでの第4打席では、左腕・寺島の外角のカットボールを左前へ軽打してマルチ安打をマーク。直後にプロ初盗塁も決めた。9回1死一、二塁での第5打席は左腕・長谷川に対し、カウント2-2から見送った外角低めの141キロ速球をストライクと判定され、三振に倒れた。

予想外の攻めにも「平然とした表情でいる所は大したもの」

野口氏は「打ち取られた打席は、内角をうまく使われている。今後、徹底的に内角へ投げられたり、厳しいコースで内角を強く印象づけられたりということが増えると思う」と予測する。「ヤクルトの村上も、徹底的にインハイを攻められて苦労した時期があったが、そこを克服して1回り大きな打者になった」と指摘。佐藤輝の今季成績については、開幕前から「20本塁打は打つ」と見ているが、「打率はまだ読めない。内角攻めに悩めば2割台前半に終わってしまうかもしれないし、意外に早く対応できれば3割の可能性もある」と語った。

いずれにせよ、大物であることには疑う余地はない。「内角を攻められたり、思わぬ攻めをされた時にも、内心はわからないが、平然とした表情でいる所は大したもの。新人離れしている」と野口氏は言う。確かに時折、顔に近いコースを攻められても、大きくのけぞることなく平然と見送った。第3打席で見送り三振に倒れたても「おそらく変化球を予想していて、ストレートに手が出なかったのだろうが、それを引きずることなく、次の打席では外角の変化球を軽打して左前へ運んだ。なかなかできることではない」と野口氏は感心することしきりだった。

オープン戦で12球団最多の6本塁打を放ち、相手は開幕早々から対策を練っているが、それを打ち破る勢いのルーキー。予断を許さない戦いが続くが、野口氏は「新人でそこまで相手にマークされるだけでも凄いですよ」と苦笑する。ますます佐藤輝の打席を見るのが楽しみになってきた。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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