12与四死球でもなぜ勝てた? 鷹・今宮の超絶美技が象徴する“王者の一体感”

ソフトバンク・今宮健太【写真:藤浦一都】

初回2死満塁の大ピンチで飛び出した今宮のスーパープレー

■ソフトバンク 3-2 ロッテ(27日・PayPayドーム)

劇的なサヨナラ勝ちで開幕2連勝を飾ったソフトバンク。27日にPayPayドームで行われたロッテとの開幕第2戦は投手陣が計12与四死球を与える乱戦の中、同点で迎えた9回に今宮健太内野手が中越えのサヨナラ適時打を放ち、試合に終止符を打った。

この日のヒーローは文句なしに今宮だった。最終回のサヨナラ打だけではない。最も大きかったプレーの1つは初回に見せた超ファインプレーだった。

立ち上がりから制球の定まらなかった先発の高橋礼。先頭の荻野に死球を与えると、2死から安田にも死球。菅野、中村奨には連続四球を与えて押し出しで1点を失った。今宮の美技が飛び出したのは、このあとだった。

なおも2死満塁の大ピンチ。ここで鳥谷が放った打球は三遊間への痛烈なゴロとなった。これを今宮は横っ飛びでダイビングキャッチ。さらに体勢が整わないままにノーステップスローで一塁へと送り、間一髪のところでアウトにした。抜けていれば、大量失点につながりかねないところで、流れを止めるビッグプレーだった。

今宮自身は試合後に「結果的に終わった時に考えると、あの満塁は非常に大きかったと思いますし、みんなで粘って粘って、いっぱいフォアボール出ましたけど、なんとか2点に抑えて、攻撃で追いついて。勝って本当に良かった」と初回のプレーの大きさを認める。そして、このプレーに、4年連続で日本一となっているソフトバンクの強さの真髄が見える。

「チーム一丸となって助け合うことで、強くなったり、一体感が生まれる」

投手が四死球を連発していては守っている野手のリズムもどうしても悪くなりがち。エラーやミスに繋がることも十分に考えられる。だが、今宮はこう言う。「ピッチャーも四球を出したくて出しているわけではないですし、人間なんでみんな調子がいい、悪いとか、何かおかしいとかがある中でゲームは続いていく。チーム一丸となって助け合うことで、強くなったり、一体感が生まれる」と。

ソフトバンクにはチームとしての一体感がある。この日のように投手陣が悪い時には、野手がカバーする。打線が打てない時には投手陣が抑えて守る。もちろん、その歯車が噛み合わない時だってあるが、投手と野手がそれぞれをカバーし合おうとする意識が強い。その意識の形として表れたのが、この日の今宮のビッグプレーだった。

6回には二塁打で出塁し、グラシアルの中前適時打で1点目のホームを踏んだ今宮。このプレーも中堅へとフラフラと上がる打球で判断が難しい当たりだったが、瞬時に藤原が取れないと判断して本塁まで生還した。一瞬の判断力が際立つ隠れた好走塁でもあった。

野手が投手を助け、投手は野手を助ける。与えた四死球は12個。その中でも勝利を拾えたのは、四死球を出しても粘った投手たちの奮闘があり、それをなんとか助けようとする打者たちの思いがあったから。この日の勝利はソフトバンクの強さの一端が見えた試合だった。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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