高校通算55発も「1番下からのスタート」 ロッテ5位の18歳が歩む“大田泰示への道”

ロッテ・西川僚祐【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

東海大相模高では通算55本塁打を放った右の長距離砲

2021年のプロ野球が開幕した26日、プロとしての新たな一歩を刻んだ。ロッテのドラフト5位ルーキー・西川僚祐外野手は、イースタン・リーグの楽天戦(ロッテ浦和)に代打で公式戦初出場。舞台は2軍でも、前進には違いなかった。

キャンプインからもうすぐ2か月。「自分は1番下からのスタートなので、毎日いろんなことを挑戦している状態。レベルはまだプロには達していないです」。チームの支配下ルーキーの中ではしんがり指名。東海大相模高を卒業したばかりの18歳は、プロの世界に慣れるのに必死だ。

高校通算55本塁打の実績も、プロでは役に立たない。チームには、レアードや井上晴哉、山口航輝ら同じ右の長距離砲が揃う。「長距離を打つ人はたくさんいるので、もっともっとレベルを上げていかないといけないなと感じました」。守備や走塁も「まだまだ雑」。ルーキーに課題は山積み。それでも、もがきながら成長していった過程が、険しい道のりに向かう自らの背中を押してくれる。

すり足から足を上げるフォームに変更した中学時代。軟式から硬式にボールが変わり、変化球にも対応するためだった。中3で出場したジャイアンツカップ決勝では、東京ドームの右翼スタンドに流し打ちで豪快な一発を叩き込んだ。

高校時代にもバッティングを大幅に改造した。転機は、2年夏の甲子園。同級生の山村崇嘉(現西武)や、鵜沼魁斗らと共に注目される中、西川は2試合で8打数無安打に終わった。チームは2回戦で敗退。悔しさを糧へと昇華させるには、変化が必要だと思った。

「2年夏までのことを全部やめて、新しいバッティングに変えました」

最も変わったのはフォームより“意識”「ホームランを打ちたい欲を捨てた」

門馬敬治監督やコーチと話し合い、試行錯誤を繰り返した。最も変わったのは、フォームよりも打席での“意識”だった。

「長打を狙ったり、ホームランを打ちたいという欲が出てしまっていました。それを捨てたというか、欲を出さないで打席に入れたのが一番変わったことかなと思います」

打席で思い描くのは、低い打球やライナーを打つイメージ。すると自然と打率も上がり、ホームランも出るようになった。

高校3年の夏に行われた神奈川の独自大会決勝では、逆転の口火を切る適時打。「どうにか1本欲しいというところで、調子が悪い中でも、形が悪い中でも、ヒットを打てた。練習してきたことが出たんじゃないかなと。そこは自信になりました。これからに繋がる試合だったんじゃないかなと思います」。丸1年をへて、成長を実感。プロへの扉もこじ開けた。

目指す将来像に重ねる姿は、高校の先輩にあたる日本ハムの大田泰示外野手。「やっぱりプレースタイルですね。ホームランもそうですけど、一塁にヘッドスライディングしたり、ガッツポーズしたり、勝ちにこだわる姿勢というのが、こういう選手をお手本にしてやりたいと思いました」。

自らに言い聞かせるよう、何度も口にした言葉。「勝ちにこだわる」。地元の千葉に本拠を置くロッテに指名され、家族や友達の前での活躍を誓う。「試合で回ってきたら絶対打ってくれる。勝ちに、勝負にこだわれる選手になりたいです」。近い未来、幕張で試合を決する一打を放ってみせる。

○西川僚祐(にしかわ・りょうすけ)2002年4月19日、千葉県船橋市出身。18歳。小学1年時に野球を始める。中学では佐倉シニアに所属。東海大相模高に進学し、高校2年時の夏には甲子園に出場。高校通算55本塁打。2020年のドラフトでロッテから5位指名を受け入団。186センチ、98キロ。右投げ右打ち。(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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