2020年コロナ禍の家計、ストレス発散消費が圧迫?支出が増えたものと減ったもの

新型コロナウィルス感染拡大の影響が長期化しています。「ボーナスゼロ」「年収〇〇%減」「希望退職者募集」など暗いニュースも多く、大半の方の家計は非常に厳しい状況がまだまだ続きそうです。その一方、業種によってはコロナ禍で思わぬ収益アップに至っているケースもあり、「今季最高益を達成」「収入アップ」などの記事も見られます。

新しい生活様式を迎えている今ですが、私たちの家計は厳しさを増しているのでしょうか、それともゆとりが生まれているのでしょうか?

大人女子向けメディアアプリ・LOCARIを運営元する株式会社Wondershakeが、コロナ禍の家計について調査しました。今回は、2020年の収入・支出の増減やその内訳を明らかにした調査結果をご紹介します。


収入は二極化。約半数が収入減も、一部収入増。

はじめに、収入の変化を見ていきましょう。

収入が「やや減った」と「とても減った」を合わせると49%で、約半数の方は収入が減っています。一方、「やや増えた」「とても増えた」を合わせると17.8%で、約2割弱の方の収入が増えています。33.1%の「変わらない」を除き、収入減と収入増が二極化していることがわかります。

収入減の理由を見ると、「業績悪化」「仕事がなくなった」とあります。接客・サービス業などは自粛要請の影響があったこと、製造業で残業が減ったことなどが要因ではないかとうかがえます。

他方、収入増の理由を見ると、「売り上げがよくなった」「手当がついた」とあります。ECサイトや運送業などは巣ごもり需要で業績が上がったことや、医療関係者に残業手当がついたことが要因かもしれません。

支出の中身が変化

次に、支出の変化を見ていきましょう。

「やや増えた」「とても増えた」を合わせると44.1%、「やや減った」「とても減った」を合わせると33.9%です。全体的に増えた、減ったと一つの傾向があるのではなく、各家庭の状況によって支出の変化にばらつきがあります。家族構成や業種などが影響していると考えられます。

では、どのような支出が増えた、あるいは減ったのでしょうか? 支出の内訳を見てみましょう。

支出が増えたものの1位は「食費(自炊)」、2位が「光熱費」、3位が「食費(テイクアウト)」です。一方、支出が減ったものは1位「交際費」、2位「食費(外食)」、3位「被服費」です。

支出の増減は「巣ごもり」「リモートワーク」の影響が大きく出ているようにうかがえます。「巣ごもり」のための「食費(自炊)」「食費(テイクアウト)」が増えた一方、「食費(外食)」は減っています。また、「リモートワーク」のため在宅時間が増えたためでしょうか「光熱費」が増え、通勤する必要がないため「被服費」が減ったと考えられます。

ストレス発散のための支出

また、支出が増えた人の理由を分析すると、外出できないストレス発散の手段として消費していることが分かります。支出が増えた人は次のように答えています。

〇旅行に行けない分、家での時間を充実させるものを買うようになった。
〇家にいるとつい通販で買い物をしてしまった。
〇娯楽で使えない分、外食やテイクアウトが唯一の楽しみになり食費が増えた。

誰もが我慢を強いられる状況である一方、支出が減った人がいます。こういった方は「今後何があるか分からないから節約した」など、長期的な見通しを立て万一に備えて支出を押さえているケースが多いようでした。

巣ごもり消費でどんなものが売れたか?

次にいわゆる「巣ごもり消費」の中では、どんなものが売れたかをさらに深く見ていきましょう。

最も多かったのは「食品」で、「本、雑誌、コミック」、「ゲーム、おもちゃ」と続きます。回答上位に当たる商品は、「おうち時間充実型消費」「趣味に没頭エンジョイ型消費」と言い換えることもできそうです。

「おうち時間充実型」は、自宅で過ごす生活の時間を豊かにさせたいと考えてのもの。特に「食品」はフードデリバリーやお取り寄せグルメなどでの贅沢を味わうことができます。

そして「趣味に没頭エンジョイ型」は、読書、ゲームなどの娯楽で巣ごもりを楽しむためのもの。「本、雑誌、コミック」「ゲーム、おもちゃ」には、月額料金で電子書籍を楽しめるサービスや、オンライン上でコミュニケーションをとりながら楽しむゲームの利用も多く含まれているようです。

Go Toなどの需要喚起政策は「良くなかった」

前項で紹介した、いわゆる「巣ごもり消費」が伸びた一方、旅行・宿泊・飲食業などは大幅に需要が落ち込みました。需要喚起を目的とした政府発信のGo Toキャンペーンもありましたが、この施策は、どのように受け止められたのでしょうか?

「あまり良くなかった」「全く良くなかった」が合計で65.6%と過半数を超えました。良くなかった理由として「準備不足」「振り回された」など政府の不手際を指摘する声や、「県外からコロナを持ち込まれる不安」「コロナを気にして出かけていない」など心理的な不安が挙げられました。

経済を優先させるがあまり、フライングとも思えたGo Toキャンペーンは、多くの国民の実状とかけ離れているように思える結果でした。

政策に振り回されず、自分のできることから家計を“ニューノーマル”へ

様々なメディアで経済の停滞が声高に叫ばれています。確かに、約半数の人の収入が減少した上に、ステイホームで新たな支出が増えており、多くの人の家計状況が圧迫されているのは事実でしょう。

しかし、冒頭のデータの通り、ネガティブな状況の中でも収入が増えた人がいます。リモートワークで通勤時間が減った分で副業を始めたり、コロナ禍で業績が上がった会社に転職したりして年収をアップさせているのです。

また、ストレス解消などの短期的な目的のために消費するのではなく、長期的展望から節約している人もいます。むやみに消費でストレスを発散するのではなく、お金のかからない趣味を始めるなどして支出を抑えることもできます。

辛い状況にいるのは自分だけでなく日本中、世界中同じです。生活様式の変化と共に、家計の“ニューノーマル”も考えるべきだと思いました。

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