宮本亜門がテレビの生放送で「日本から五輪中止を表明すべき」と勇気ある発言! 一方、東京は異常な検査の少なさ、五輪強行のため感染隠しか

日本テレビ『真相報道バンキシャ!』番組公式ページより

昨日28日放送『真相報道バンキシャ!』(日本テレビ)に出演した演出家・宮本亞門氏の発言に称賛の声があがっている。宮本氏は「ごめんなさい、炎上覚悟であえて言います」と前置きすると、こう述べたのだ。

「僕は日本から中止の意思を表明するべきだと思います」
「オリンピックは日本だけのものでなく、世界のものであり、先進国だけのものでもなく、後進国のものでもあります。もう、いまの感染状況の世界を冷静に見てて、インド、ブラジルを含めてなんですけど、これだけになっているなかで、みなさん切り裂かれちゃうんですよ、国民の気持ちが。みなさんの本当にやりたい気持ち、わかるけれども、いま誰がNOを言うか。やはり日本が勇気を持ってNO!と言うことを僕は期待したい」

宮本氏は東京五輪組織委員会が主催するイベントでモデレーターを務めたりコンサートの企画・構成を手掛けるなど東京大会の開催に協力してきた立場でもある。にもかかわらず、明確に反対だと声をあげたのだ。

この勇気ある発言には、ネット上でも「よく言ってくれた」「この発言をする覚悟がすごく伝わってきた。立派でした!」「素晴らしい!賛同します!」「拍手したい」と共感が広がっている。

しかし、宮本氏の指摘はあまりにも当たり前、良識を持っていれば当然の見解だろう。しかも、宮本氏はインドやブラジルなどの感染状況を例に挙げたが、開催都市である東京都の感染状況を考えても同様だ。

というのも、昨日28日の新規感染者数は東京都が313人に対し大阪府が323人と上回ったことが大きく報じられたが、じつはこの数字にはカラクリがある。東京都は検査数が圧倒的に少ないのだ。

実際、直近1週間(22〜28日)のその日に発表された検査数の合計は、大阪府が7万4482件であるのに対し、東京都は4万9162件。東京都の場合、検査数が1万件を超えたのは25日だけだ。

●東京都の異常な検査の少なさ 1週間の検査数は大阪の3分の2 変異株検査も石川県の3分の1

言っておくが、大阪の感染数の多さは吉村洋文知事が緊急事態宣言の解除に前のめりになった結果であり、検査数も褒めるほどの数字でもない。

問題は、東京の検査数があまりに少ないことなのだ。その上、最近判明した東京の新規感染者は宣言解除前の感染者であり、宣言解除の影響が数字に反映されるようになればさらに深刻になることはわかりきっているが、このようなお粗末な検査数ではその実態は覆い隠されてしまうだろう。

さらに、東京都は変異株のスクリーニング検査数も圧倒的に少ない。厚労省が公表した「変異株スクリーニング検査の実施状況」(速報値)によれば、3月8日〜14日の件数は、石川県がトップで187件、次に埼玉県が154件、北海道が137件とつづくが、対して東京都はわずか67件。小池都知事は変異株検査について「4月上旬に25%にし、さらに早期に40%を目指す」などと述べているが、すでに兵庫県神戸市は60%以上もおこなっており、目標設定自体が低すぎると言わざるを得ない。

検査数も少ない上、変異株検査も少ない都市が7月には五輪を開催しようなど正気の沙汰ではないが、むしろ、これは東京五輪を開催するための実態隠しなのではないかという穿った見方が出てくるのが自然だろう。感染者数の問題はもちろんのこと、変異株感染が確認された場合は原則入院措置がとられ、退院基準が厳しく入院期間が長くなるとも指摘されている。つまり、これまで以上にすぐさま病床が逼迫する可能性が高いからだ。

市民の安全よりも東京五輪開催が優先されるという、この異常事態──。しかも、そこまでして東京五輪を開催しようという動機は、なにかと強調される「復興五輪」でも「アスリートファースト」でもなく、スポンサー企業のためでしかないことがあらわになっている。

実際、本サイトでも既報で取り上げたように(https://lite-ra.com/2021/03/post-5836.html)、25日からはじまった聖火リレーでは、聖火ランナーよりも先導するコカ・コーラやTOYOTAなどのスポンサー企業の車両が感染対策も万全とは言えない状況でバカ騒ぎを繰り広げていることが明らかになった。

●報道の自由より五輪利権優先 マスコミ各社に聖火リレーの動画公開は72時間以内の制限

しかも、聖火リレーをめぐっては、報道の自由より国際オリンピック委員会(IOC)のビジネスのほうが優先されていることも明らかになった。

くだんの聖火リレーにおけるバカ騒ぎは、東京新聞がネット版記事で動画をつけて指摘。同記事の動画は「大手マスコミが報じない実情」として大きな反響を呼んだのだが、東京新聞はこの動画を28日夕方に削除してしまった。

しかし、これは何も東京新聞が圧力に屈した結果ではない。IOCが、「新聞メディアが撮影した動画を公開できるのは走行後72時間以内」というルールを敷いているためだ。

憲法に保障された報道の自由よりもIOCのルールが優先されるとはまったく意味がわからないが、そもそも組織委は昨年、一般人が撮影した聖火リレーの動画をネット上に投稿することさえ「放送権を持つテレビ局の権利保護」を理由に禁じると発表し、非難が殺到したあとに「IOCから間違いだと指摘を受けた」として撤回するという騒動も起こしている。公道で一般人にそんな制限をかけられると考えた時点で何様かという話だが、このように、本番前の聖火リレーの段階から五輪の「商業主義」「スポンサーファースト」があきらかになっているのである。

それでなくても聖火リレーでは当初から懸念されていた観衆の「密」がさっそく問題化しているが、本気でこの国は世界の感染状況を無視し、国内の感染者数を抑え込むこともできないというのに、「スポンサーファースト」でしかない東京五輪を強行しようというのか。いまこそ、市民が「日本から中止の意思を表明するべき」という宮本氏の声につづかなくてはならないだろう。
(水井多賀子)

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