映画『マンマ・ミーア!』や『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』など、強く、凛として人生を生き抜く女性たちの姿を描いてきた女性監督フィリダ・ロイドがメガホンをとり、アイルランド・ダブリンで活動するクリエイターのクレア・ダンが脚本と主演を務めた作品です。
主人公は、夫からの酷い暴力から2人の娘を連れて逃げた女性・サンドラ。暴力夫から逃げたものの、司法の壁はシングルマザーに冷たく、毎週夫に子供たちを面会させなければならなかったり、仕事をいくつ掛け持ちしても生活苦からは逃れられない。いくつもの手続きをこなしても、補助金もなかなかおりず、全く社会から守られていない彼女はゴミ溜めのような部屋から脱出するため、自分自身で家を建てることを決意します。「見返りを求めない仕事はしない」という人間が多くいるなか、彼女の夢を叶えるため、仲間たちが少しずつ集まり、小さな家を建てる決意をします。
クレア演じるサンドラは、いつも眉をひそめ、どことない緊張感が常に彼女を包んでいます。それは私自身がかつてまとっていた、不安な気持ちを思い出させるもの。コロナ禍で貧困の壁に直面しているシングルマザーが多いなか、サンドラのようにいつもお金のことで眉をひそめ、肩に力を入れながら生きる母親はどれだけいるでしょう。私たちは彼女たちを守っていかなければならない。優しい男性も登場しますが、やはり強い女たちがお互いを支え合う。涙を流し合うのではなくて、強く、凛とした態度で団結する姿は強く背中を押されました。「女性たちよ、強くあれ」そんなメッセージがスクリーン越しに感じられました。★★★★★(森田真帆)
4月2日(金)から全国公開
監督:フィリダ・ロイド
出演:クレア・ダン、ハリエット・ウォルターほか