1年で200品を紹介 落語家ユーチューバーが感服した「伝統と革新」の和菓子の世界

和菓子ユーチューバー・三遊亭竜楽

新型コロナウイルス禍で旅行もままならない中、自宅でも旅先に行った気になれる「お取り寄せ」が注目されている。日本語、英語、フランス語、ドイツ語など8か国語で落語を演じる三遊亭竜楽(62)が、ユーチューブで「和菓子」に特化した「三遊亭竜楽の和菓子チャンネル」を開設し、これまで約200品を紹介してきた。竜楽によれば、数々の和菓子を取り寄せて、あることを確信したという。また強く印象に残った和菓子ベスト3を聞いた。

竜楽がユーチューブチャンネルを開設したのは2020年2月。外国語で落語を演じて海外に発信しているように、「日本文化を発信するためのツールとして始めました」。和菓子に特化したきっかけは「『詳しいですね』と言われたことです。日本各地で公演する際、楽屋見舞いでいろんな和菓子をいただいてましたから」。現在、週に3本のペースで更新している。

当初は落語会を行った地方の銘菓を紹介するつもりだったが、新型コロナ禍によって落語会開催が不可能に。そこでお取り寄せに切り替えた。1年の間に全国から数々の和菓子を取り寄せ、実際に食べたことで、和菓子に対する考え方が大きく変わったという。

「正直、こんなに勉強になるとは思いませんでした。和菓子は日本そのものです。四季のいろどりを映し、匠の技を伝え、伝統的な“型”を守りながら、その時代のものを取り込んで新しいものも生んでいます。そしてその材料は農家さんの真摯な毎日に支えられている。パッケージは箱の紙の種類、質感、色にこだわる。大手だけでなく、町の和菓子屋さんもそこまでやります。海外から見ると“病的”と言われるかもしれないレベルのこだわりです」

材料、作り方、見せ方、それを包む箱まで日本らしさが行き届いている。竜楽は取り寄せて和菓子を食べ続けるうちにそこに気付き、改めて「これぞ日本の伝統文化」と思ったという。

中でも感心したのがその革新性だ。「和菓子屋さんには100年以上の歴史を持つ店が多くあります。伝統を守りながらその時代のエキスを入れ、磨き続けたから持続できたのでしょう。例えば冷蔵庫が当たり前にあるようになって生まれた和菓子や、海外から様々な食材が豊富に入る今だから生まれた和菓子もあります」。前者の例は数々の要冷蔵の和菓子、後者の例として竜楽が挙げたのが鹿児島県日置市・梅月堂の「ラムドラ」だ。

「初めて食べた時はビックリしました。マイヤーズのラム酒に漬けたレーズンと大納言小豆のあんは、香り高くて味が良く、2つの食感が際立っている。ラムレーズンをどら焼きに入れようなんて、これを考えた人は偉いと思いました」

各地の和菓子を取り寄せ続けたことで、和菓子の世界の深さと素晴らしさを知ったという竜楽。「コロナ禍が終わり、また世界から観光客が日本に来るようになった時、旅の上級者はこういう地方のいい和菓子店を目指すでしょう。その時まで店が残っていてくれなければ困ります。微力ですが、動画で応援させていただければと思って続けています」

なお、和菓子を食べ続けているにもかかわらず「健康診断ではここ数年で最高に良い数値でした」という。

最後に、竜楽は強烈なインパクトを残した和菓子として、「宮城県仙台市・九重本舗玉澤の『霜ばしら』、福岡県福岡市・松屋利右衛門の『鶏卵素麺』、そして前出の『ラムドラ』です」と3つを挙げてくれた。

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