肥満や糖尿病がある人は口腔機能が低下するリスクが高いことを阪大が確認

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大阪大学(阪大)は3月25日、生活習慣病患者の中で肥満や糖尿病がある人は、口腔機能が低下する「オーラルフレイル」のリスクが高いことを明らかにしたと発表した。

同成果は、阪大大学院 医学系研究科の髙原充佳寄附講座講師(糖尿病病態医療学)、同・下村伊一郎教授(内分泌・代謝内科学)らの研究チームによるもの。詳細は、国際科学誌「Obesity Research & Clinical Practice」にオンライン掲載された。

オーラルフレイルとは、口に関する些細な衰えを放置したり、適切な対応を行わないままにしたりすることで、口の機能(口腔機能)の低下、食べる機能の障がい、さらには心身の機能低下までにつながるという、負の連鎖が生じてしまうことに対して日本歯科医師学会が警鐘を鳴らした概念だ。

近年、オーラルフレイルは全身のフレイル、全身の筋肉量や筋力が低下して身体能力が低下した状態の「サルコペニア」(転倒やふらつきなど、日常生活に支障を来し、活力の低下や寝たきりにもつながる)、低栄養などと強く結びついていることがわかってきている。

また口腔機能の低下を予防することは、健康寿命延伸に寄与する知見も示されていることもあり、2018年度には医療保険病名として「口腔機能低下症」が採用されるなど、社会的にも注目されるようになってきている。

オーラルフレイルの状態は、全身の機能が低下し、栄養状態も悪くなるような人に多く見られる。一方、過食や食生活の乱れが問題となりがちな生活習慣病の患者において、栄養状態の悪化とは真逆の状態にあると考えられる肥満、すなわち過栄養でもオーラルフレイルを認めるかはよくわかっていなかったという。そこで今回の研究では、生活習慣病患者の中で、どのような人がオーラルフレイルのリスクが高いのかの調査が行われた。

具体的には、糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症のいずれか1つ以上の生活習慣病がある患者(大阪府柏原市の医療法人である白岩内科医院に通院中の患者)1000名を対象に、口腔機能の指標である咀嚼機能(歯で噛み砕く機能)と舌口唇運動機能(舌と唇を動かす機能)の調査が実施された。

その結果、フレイルおよびサルコペニアの指標である握力や歩行速度の低下ならびに年齢が、咀嚼機能の低下および舌口唇運動機能の低下と関連していることが確認された。さらに、糖尿病と肥満も、これらの因子とは独立して、咀嚼機能の低下・舌口唇運動機能の低下と関連していることが明らかとなったのである。

人間がものを食べる際、食べ物を砕く歯そのものの働きももちろん大切だが、1回1回噛むごとに舌や唇をうまく協調させて動かせることも重要になる。これらの機能が低下してしまうと、食べ物をうまく噛めなくなってしまうからだ。今回の研究結果は、肥満や糖尿病の患者では、食べ物をうまく噛めていないリスクが高いことを示唆しているとした。

また今回の結果から、従来とは反対の肥満、過栄養の状態も、オーラルフレイルのリスクであり、注意が必要であることが示された形となった。これまで、肥満や糖尿病患者に対しては、食事の注意点として、食事の量やバランスに加え、しっかり噛んで食べること、すなわち、一口当たりの噛む回数を増やすことがよく挙げられてきた。

しかし今回の結果から、肥満や糖尿病がある患者では、噛む回数を増やす以前の問題として、そもそもうまく噛めていない可能性が考えられるという。噛む回数を増やすという従来の指導にとどまらず、患者さんの口腔機能の状態を正しく評価し、低下している場合には機能の改善や、口腔機能に合わせた食事内容を提案するなど、新たなアプローチが必要であることが示唆されるとしている。