平和願い劇、天国に届け あさぎり町・上小6年生が制作、披露 戦争体験講話の男性急逝、遺族ら感謝

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 あさぎり町の上小の6年生が、平和学習で聞いた戦争体験の講話を基に戦争の悲惨さを訴える劇などをつくり、下級生らに披露した。講話した男性は劇を見ることなく急逝したが、遺族から卒業祝いが届くなど心温まる交流が続いている。

戦争体験の講話を聞き、和泉等さん(後方左から3人目)に質問する上小の6年生=昨年11月5日、あさぎり町(写真は同小提供)

 平和学習は昨年11月、総合的な学習の時間に、近くの故和泉等さん(当時93)が6年生41人に自らの戦争体験を話した。17歳で出征した和泉さんは、訓練時の厳しい制裁と空腹に耐えて戦地へ。軍艦で警戒中、突然戦闘になり、「敵機の爆撃や低空射撃の後、30人以上の仲間が血だらけで助けを求めていた」などと生々しく語った。

戦争体験の講話を基に制作した劇を披露する上小の6年生=2月17日、あさぎり町(写真は同小提供)

 衝撃を受けた児童たちは、戦争の悲惨さや平和の尊さを広く発信して、いじめや争いをなくそうと講話を基に劇と紙芝居を制作。「くり返してはいけない戦争」というタイトルで、2月17日から3日間に分けて学年ごとに下級生に披露した。

 和泉さんは直前の2月14日に死去。「劇を見てもらいたい」という児童らの夢はかなわなかったが、何度も脚本を書き直し、3月3日の授業参観で保護者の前で演じた。劇と紙芝居はDVDにまとめ、和泉さんの仏前で報告。23日の卒業式には遺族から全員に図書カードが贈られた。

 劇の企画から運営まで手がけ、繰り返し練習する児童たちの姿に、担任の木下晃司教諭(35)は成長を実感。「下級生や保護者にしっかりと発信でき、大きな自信になったはず」と目を細める。

 和泉さんの長女鳥居昭子さん(65)=熊本市=は「子どもたちが、平和を願う父の思いを受け止めてくれて感謝の気持ちでいっぱい。父も喜んでいるはず」と話した。(坂本明彦)

熊本日日新聞 2021年3月25日掲載