神奈川・黒岩知事「事件と同じ土壌にある」 障害者支援実態報告受け

小川部会長(左)から報告書を受け取る黒岩知事=県庁

 神奈川県立障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件を踏まえ、県立施設の利用者支援の実態を検証する県の有識者組織が30日、報告書をまとめ、黒岩祐治知事に提出した。身体拘束が長期間にわたって続いてきたことなどを指摘。知事は事件との関係性について「同じ土壌の中にある話だ」との認識を示した。

 学識者や障害当事者らでつくる「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」(部会長・小川喜道神奈川工科大名誉教授)は昨年7月から、県直営と指定管理者制度の計6施設について身体拘束の実態調査や職員らのヒアリングを進めてきた。

 報告書では、長時間の居室施錠など各施設での実態とともに、虐待認定を受けた事案の検証結果も記載。県の関与については、監査で不適切な支援を十分に発見できていないことや、身体拘束に関する県職員の認識の低さなどを指摘した。

 全体考察として、現場レベルでの情報共有不足、施設管理レベルでは支援内容や客観的評価の不足、政策レベルでは県の運営指導の不十分な点などを挙げた。今後については、身体拘束が人権侵害という認識を持ち、通報の徹底をはじめ、虐待ゼロ実現を目指す取り組みなどを実践するよう求めた。

 知事は「報告書の重みをしっかりと受け止めたい。虐待と言わざるを得ない状況が今も続いているという現実が示され、県の責任も重大。利用者目線の支援に向けて提言を実践していく」と表明。記者団から支援実態と事件との関係性を問われ、「直接結び付けるのは難しいが、同じ土壌の中にあったと感じさせる。こうした状況が続けば同じような事件が再発してもおかしくないという危機感を持っている」と語った。(佐々木 航哉)

© 株式会社神奈川新聞社