F1にもっとも近く世界も注目の“日本一決定戦”スーパーフォーミュラ【開幕直前モータースポーツ入門ナビ】

 各地から届く桜や梅の開花の便りとともに、春が一歩一歩近づいてくることを実感する3月。モータースポーツの世界では通常、新しいシーズンの開幕が迫る時期を迎える。

 2021年もいまだ新型コロナウイルスの脅威が収まらぬなかではあるが、F1をはじめ、WECやインディカ―、国内のスーパーGT、スーパーフォーミュラといった各シリーズの開幕戦が3~4月にかけて順次開催されていく。

 ここでは、そんな各カテゴリーの楽しみ方や、観戦のヒントとなるポイントを初心者にも分かりやすく紹介していく。シリーズ第4回目となる今回は4月4~5日、富士スピードウェイで開幕戦が行われる全日本スーパーフォーミュラ選手権だ。

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■ポイント

・日本でもっとも速いレースシリーズ
・F1と同じオープンホイールのフォーミュラカーで戦われる
・シャシーとタイヤはワンメイク
・エンジンはトヨタとホンダの2社が開発して供給
・ドライバーの腕が予選、決勝の結果を左右しやすいカテゴリー
・マシンパフォーマンスはF1にもっとも近く、F1を目指す海外ドライバーの参戦が近年急増

開幕戦の舞台となる富士スピードウェイでのテストで、最後のセッションをトップタイムで締めくくった平川亮。第1戦の大本命に。

■スーパーフォーミュラの紹介

 日本のレースのなかで、もっとも速いカテゴリーである全日本スーパーフォーミュラ選手権。元は1973年から開催された全日本F2000選手権を原点とし、全日本F2選手権、全日本F3000選手権、全日本選手権フォーミュラ・ニッポン、そして2013年から全日本スーパーフォーミュラ選手権と名称を変えながら続いてきた、日本のトップフォーミュラレースだ。

 2019年シーズンよりイタリアのレーシングカーコンストラクターであるダラーラが開発した『ダラーラ・SF19』のワンメイクシャシーを採用している。タイヤもヨコハマタイヤのワンメイクのため、パッケージはイコールコンディションに近く、ドライバーの腕がレースの結果を左右しやすいシリーズだ。

 エンジンはトヨタ、ホンダの国内メーカー2社が専用開発した2リッター直列4気筒ターボのレーシングエンジンを使用し、最大出力550馬力以上を発揮する。

 全戦が日本国内での開催となり、2021年シーズンは6サーキットで7戦の開催を予定している(鈴鹿サーキットで2戦を予定)。レース距離は最短110km~最長300kmとされているが、2019年シーズンは全戦250kmで開催。2020年シーズンは新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、予選と決勝が同日に行われるワンデー開催となったため、1大会160km~190kmと短めのレース距離での実施となった。

今年TCS NAKAJIMA RACINGに移籍した2020年チャンピオンの山本尚貴

 予選はQ1~Q3のノックアウト形式を採用。フリー走行、公式予選、決勝と1大会で使用できる新品ドライタイヤは4セット16本に制限され、予選での使いどころが大きな鍵を握っている。

 また、決勝レース中も1回のタイヤ交換が義務付けられており、チームとドライバーの共同作業でもあるピットストップタイミング、そしてピットでのタイヤ交換前後のインラップ、アウトラップが決勝レースの勝負どころのひとつだ。

 そして決勝中のオーバーテイク機会を増やす試みとして、全車に“オーバーテイクシステム(OTS)”を搭載。ステアリングにあるOTSボタンを押せばエンジン出力が約60馬力向上するが、OTSは1レースで200秒までの限定使用となる。追い抜く側だけでなく、前を走るマシンも防御としても使用できるため、いつ、どこでOTSを使用するのかも決勝の見どころのひとつとなる。

 F1にもっとも近い、高いパフォーマンスを発揮するシャシー&エンジンの組み合わせに加え、世界的に見てもワンメイクレースとしての完成度の高さが人気を呼び、近年は海外ドライバーの参戦が急増しておりFIA-F2で実績を残したドライバーの参戦も珍しくない。F1へのステップアップを目指すレッドブル・ジュニアの若手ドライバーや、2020年シーズンは23年ぶりの女性ドライバー、タチアナ・カルデロンが参戦し大きな話題となった。

2021スーパーフォーミュラ鈴鹿公式テスト タチアナ・カルデロン(ThreeBond Drago CORSE)

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