“飛びすぎる金属バット”の見直しで高校野球はどう変わる? 現場指導者の見方は… 

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今大会1号本塁打を放った東海大菅生・鈴木悠平

佳境を迎える第93回選抜高校野球大会。「1週間500球以内の投球数制限」(試行期間3年)がスタートしたが、高校野球は次なる改革に向けて動きだしている。金属バットの見直しで、反発力を低くすることで打球速度を抑える「低反発金属バット」の導入が検討されているのだ。早ければ来春以降にも着手されるこの改革を現場はどう捉えているのか。

賛否両論がいまだ残る「1週間500球」の球数制限が今大会からスタートした。初戦の登場が遅いチームが不利になるため、組み合わせ抽選に左右される不公平感が拭えず検証と議論の余地も残すが、ひとまず変革の一歩を踏み出した。大会が終盤に差しかかるにつれ「球数」関連の報道も増えているが、現場は次なる変革に向けて着々と動きだしている。それが金属バットの低反発化だ。

2019年から日本高等学校野球連盟は「守備側の故障予防と打者優位の現状を抑制して投手を守る」(高野連関係者)という観点から“飛びすぎる金属バット”の見直しを進めている。

高校野球のバットは1974年、折れやすい木製から耐久性の高い金属に変わった。経済的負担を少なくし、競技普及の狙いがあった。その後、技術改良で性能が上がり反発力はアップ。筋力トレーニングが発達し、球児の肉体強化も進んだ。強烈な打球が投手や野手を襲い、危険な事案も発生。安全対策からのアプローチが高まっていた。また、体に負担のかかる変化球の多投や窮屈な配球など球数がかさむ要因となり得ることから本格的な見直しは既定路線で進んでいる。投手を守る観点で「球数制限」よりも分かりやすく、効果的と受け止められている側面もある。

現場の多くの指導者たちも反発係数の低い金属バットの「導入は間近」との認識だ。3年生野手22人の通算本塁打が実に240発を超える健大高崎打線を指導する赤堀佳敬コーチは「金属バットの反発係数が落ちる。実際に導入されてみてどうなのかというのはありますが、最低限の打力と細かい野球をよりやっていかないといけない。木製バットに近い野球、大学野球のような野球ですよね。そういうことも必要になってくる。時代とともにモノが変わり、野球も変わる。勉強していかないといけないと思っています」と語る。指導者たちは異口同音に、道具の変化によって高校野球が大きく変わるとの認識を示し、準備を進めている。

金属バットに頼ることで技術習得の鈍化も叫ばれてきた。当然、低反発化しても「金属は金属」に変わりないが、より芯でコンタクトしなければ飛ばない。かねて高反発金属バットの隆盛について、複雑な心境を打ち明けてきたのはソフトバンク・王貞治球団会長(80)だ。「今の金属バットは(肉厚が)薄いんだよね。(復元力が増して)それでよく飛ぶ。それで、どうしても技術的にはプロに入る時に矯正しないといけないから遠回りするんだ。金属バットから木製バットに対応するのが難しくなっているよね」。超高校級と騒がれた金の卵たちがプロ入り後に苦戦する姿は枚挙にいとまがない。木製使用のU18国際大会などでの苦戦も続いている。道具が変わり、アプローチが変わることで、球児たちの未来も変わっていく。

野球界全体としては変革への歩みに異論は少ない。改革を進めながら、高校野球は変わる。すでに「球数制限」の先を見据えて動きだしている。