魚の大量死…「ずさんな管理体制」課題残す 長崎市水産センター高島廃止

空になった水槽を見つめる濱脇社長=長崎市水産センター高島事業所

 長崎市は、施設の老朽化や飼育する種苗の需要減に伴い、離島の高島町にある市水産センター高島事業所を3月末で廃止する。ブランド魚「高島ヒラメ」の生産は終了し、指定管理者だった長崎高島水産センター(濱脇哲夫社長)も解散。魚の大量死を起こすなど同社の「ずさんな管理体制」(濱脇社長)があった一方で、運営面での市側のサポートが十分だったか、今後に課題を残した。

 「ここにはヒラメがびっしりいましたよ」-。1月上旬、同事業所。約2年前に就任した濱脇社長が空になった巨大水槽を見つめ、つぶやいた。水槽の表面にはうっすらとほこりが積もっている。一部の施設では屋根が破れ、倉庫の中に日光が差し込んでいた。
 同事業所は2001年、種苗生産や炭鉱閉山後の島の活性化などを目的に旧高島町が開設し、当初から同センターが運営。05年の自治体合併後は市が施設を引き継ぎ、同センターが運営を受託してきた。
 陸上でカサゴやヒラメの種苗を生産し、ヒラメ成魚などを養殖。ヒラメ成魚はブランド「高島ヒラメ」として贈答品に利用されたり、市内料亭に卸されたりもしてきた。天然ヒラメの半値程度と買い求めやすく、刺し身でも食べられる新鮮さが売りだった。
 一方で、養殖魚の大量死も繰り返された。海水をくみ上げるポンプが停止していることに気付かず放置したことや、魚の病気が広がったことなどが原因だ。「技術力も、税金で魚を育てているという社員の意識も足りなかった。どんなに魚を死なせてしまっても、市から決まったお金をもらえるという甘えがあった。“ぬるま湯”に漬かりきっていた」。濱脇社長はこう悔やむ。
 市は委託費として05年度以降、累計約9億7600万円を支出(19年度までの実績)。売上高は年間約6700万円(08年度)に上ることもあったが、近年は先細りだったという。最大時は10人以上いた従業員も「会社の将来への不安」(濱脇社長)から離職が続き、今は社長を含め3人だけだ。市の担当者は「(研修を実施するなどして、市が)もっとノウハウを伝えていれば、(生産の)達成状況も上がったはず」と話す。
 今後、同事業所の機能は市水産センター(牧島町)に集約されるが、廃止に伴い貴重な産業の場も島から消えることになり、影響を懸念する声も上がる。市は雇用創出の面からも陸上養殖を高島で継続させたい考えで、同事業所の土地・建物などの不動産鑑定評価を実施する方針だ。市によると、市内の水産関係事業所5社に聞き取りした結果、1社が「条件によっては活用したい」との意向を示しているという。市議会からは「移譲しても、民間が高島で存続できるサポートを続けてほしい」との要望も上がり、市の対応が問われている。


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