無免許運転繰り返した70代、「雨が降ったりして、つい乗った」 家族にも明かしていなかった過去の死亡事故

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娘は男に二度と無免許運転をさせないよう車の鍵を取り上げた(写真と本文は関係ありません)

 小柄で痩せ型の白髪交じりの70代男は、無免許運転をしたとして道交法違反の罪に問われた。透析治療を終え、軽トラックを運転して病院から帰る途中、現行犯逮捕された。摘発されたのは今回が初めてではなかった。

 近くに住む娘が弁護側の証人として証言台に立った。男の妻名義だった車を引き取り、鍵も取り上げるなど対策を講じたと説明した。「注意しても言うことを聞かない時もあったが、今後は運転させないようにします」と男の監督を誓い、酌量を求めた。

 公判は事実関係を争うことなく、淡々と進んだ。あなたはいつ、お父さんが無免許だと知りましたか-。「数年前に無免許運転などで罰金刑を受けた時に初めて知った」と答えた娘に対し、裁判官が放った言葉が法廷の空気を一変させた。

 「お父さんはずっと無免許で、過去に事故を起こして人を死なせたこともある。軽く考えてもらっては困る。きちんと指導してください」。畳み掛けるように告げられ、娘はただぼうぜんとするしかなかった。

 その後の被告人質問。触れられたくなかった過去を明らかにされた男は「昔、人身事故を起こしたことを今の家庭には言ってなかった」とうつむいた。

 罰金刑を受けた後も無免許運転を重ねてきた理由を問われ、「車だと(バスと違って)待ち時間なく帰れるので便利だった」「雨が降ったりして、つい乗ってしまった」。過去に重大事故を起こしたとは到底思えない安易な理由を並べる男に、人命を奪った罪悪感はなかったのだろうか。

 弁護側に今後の免許取得の意思を尋ねられると「年も年なので仕事がほとんどない。免許を取りに行くことも、その必要もない」。検察官には「もう二度と運転しない」と迷わず答えた。これまで何度も摘発されてきただけに、男の言葉はどこかそらぞらしく響いた。

 「常習的で悪質な犯行。順法意識がない」として検察側が懲役10月を求刑したのに対し、男には懲役10月、執行猶予3年の有罪判決が下された。死亡事故を起こして服役後の約30年間、罰金刑以外の前科がなかったことなどを考慮された。

 裁判官は「交通法規を軽視する姿勢が顕著。被告人は厳しい非難に値する」と指摘。うなだれるように聞いていた男に「これからは慎んで生活してほしい」と続けた。男は繰り返してきた無免許運転をやめることができるのか。判決が言い渡された法廷に、男の監督を誓った娘の姿はなかった。