Vol.53 DJI FPV完結編!ゴーグルで目視外フライト&空撮の巻[Reviews]

国土交通省東京航空局長からDJI FPVの目視外飛行について飛行許可承認申請が出ましたので、さっそくゴーグルを装着してDJI FPVをフライトさせて行ってきました(FPVビギナーなのでSモードでのフライトです)。屋外でゴーグルを利用したフライトは初めての筆者ですが、事前にフライトシミュレーター「DJI Virtual Flight」での練習もできたので安全に楽しむことができました。

安全な場所からの離着陸。慣れないうちは椅子に座りながらの操縦がベター

パイロットがゴーグルを装着した状態で離陸するため、離陸時の安全管理は特に気をつけます。急に人が近づいて来ないよう補助者に周辺を確認してもらいながら離陸(航空局標準マニュアル02を利用している場合は周囲30mに第三者または第三者の物件がない状態で離着陸してください)。

離陸準備中。ちょっとビビりが入っているので内股です
ちょっとシュールな操縦風景。周辺に第三者がいない環境下、となりに補助者に立ってもらって周辺の状況や機体の位置・状態を逐次アドバイスしてもらいながら操縦した

当初ゴーグル酔いが心配だったのですが、実際にFPVでフライトをしてみると意外と大丈夫でした(苦笑)。シミュレーターで地道に練習して少し慣れたのかもしれません。水平に飛行しているときは特に酔うことはありませんでした。

ただ、急下降やカメラジンバル操作で画角が急に変わったときなどに気持ち悪くなったり、立って操縦していたら足元がふらついたりしてしまいました。このあたりは個人差だと思いますが、慣れない方は椅子に座りながら操縦したほうがよいかと思います。

機敏な動きは今までにない操縦感。慣れてくるとMモードでフライトしたくなる

FPVでは、映像を頼りにフライトができますので目視飛行時よりもイメージに近い飛行経路でフライトができます。また、NモードやSモードでフライトするのであれば、MavicやPhantomでモニターを見ながら目視外飛行ができれば難なくFPVで操縦できると確信。筆者はMモードは訓練がだいぶ必要です(まだ屋外飛行技術を取得できていないため今回の飛行では見送りました…)。

空撮機と明らかに違うのは、やはり加速と上昇&下降のスピード。操縦に慣れれば、岩山をすれすれに急上昇したり急降下したりということもできそうです。上下に稼働するジンバルも利用すれば、Sモードでも迫力ある映像が撮れる…かもしれません。

筆者も急降下時にジンバルを下方に向けて落ちていく映像を撮ろうかと思ったのですが、ジンバルを下に向けるとどうしてもプロペラが映り込んでしまいますね。やはり、上下の動きが激しいアクロバティックな映像を撮るには機体の傾斜角制限を解除したMモードでのフライト技術が必要そう。また、ジンバル操作でカメラ角度を変えると機体正面が見られなくなるのでこちらも慣れるまで恐怖心が強く出ます。

ひとまず、FPVをただひたすら楽しんでみました。

4K60p/映像ブレ補正ON/カメラ設定オート/カラー補正なしで撮影

次に、DJI FPVで撮影した素材と、これまでに同じ場所でレビューしたMavic 2 Pro/Mavic Air 2/DJI Mini 2の素材と組み合わせてひとつの映像を作ってみました。収録時はカメラ設定オートのDJI FPVは4K/60p、Mavic 2 Pro/Mavic Air 2/DJI Mini 2は4K/30pで撮影しています(各機体とも別日による撮影)。

映像の速度はどれも撮影時の等速です。映像は約2分の前半が色補正済み、後半2分(同一映像)が色補正なしのものを参考に入れていますので比較してみてください。

1インチセンサーを搭載したMavic 2 Proの画質(ダイナミックレンジ・色の幅)は別格ですね。1/2インチセンサーのMavic Air 2と1/2.3インチセンサーのDJI Mini 2はそれほど見分けはつけられないレベル。対して、DJI Mini 2と同サイズのセンサーを積むDJI FPVですが、60pで撮影しているせいか(シャッタースピードが速い?)どうしても暗くなりがちな映像で光のハイライト部分が白飛びしています。

しかし、アクセント的にFPV映像が入ってくると動きの少ない風景映像に躍動感が出るのでこれはこれでおもしろいと思います。また、DJI FPVは機体の角度がさまざま変わるのでカメラ設定を固定しづらいと感じました。通常時の撮影で使う際にもカメラ設定はオートがベターなのかもしれません。

ちなみに、[Reviews]No.51でチェックした「緊急ブレーキ&ホバリング」ボタンを押すような場面はフライト中はなかったのですが、FPVフライトが楽しくてついバッテリー残量のギリギリまでフライトしてしまい、リターン・トゥ・ホームモードに入ってしまう場面がありました。

しかし、フェールセーフとしてこの「リターン・トゥ・ホーム」がちゃんと動作するFPVドローンというのはとても安心感があることもわかりました。200mほど離れた場所からの帰還だったのですが、1m範囲の誤差の帰還&着陸が可能でした。

FPVビギナーがDJI FPVでFPVフライトデビューするプロセス

5回にわたりDJI FPVレビューをして来ましたが、FPVデビューをするまでのプロセスをまとめたいと思います。

1)機体を購入、保険加入と目視飛行練習

機体を購入したらまずは無償付帯賠償責任保険に登録し、航空法に触れない条件下でDJI FPV の目視飛行の練習をしましょう。機敏な動きは空撮機しか操縦していないパイロットには慣れが必要です。機体の特徴は[Reviews]No.51を参考に。

2)DJI Virtual Flightを活用して目視外飛行訓練

屋外で目視飛行練習をしながら、同時期にシミュレーター「DJI Virtual Flight」とゴーグルを活用して目視外飛行の練習もしましょう。ゴーグル初心者の方はまずは酔わないかもチェック。シミュレーターの概要は[Reviews]No.50を参考に。シミュレーターによる目視外飛行になれたら実際の機体を航空法に触れない条件下で目視外飛行させて訓練も忘れずに(訓練・飛行実績がないと目視外飛行の飛行許可承認は出ません)。

3)国土交通省に目視外飛行の飛行許可承認申請を提出

DJI FPVで10時間以上の飛行実績、目視外飛行で国土交通省への申請時に添付予定のマニュアルに記載された技術を習得できたら国土交通省へ目視外飛行の飛行許可承認申請を行います。ポイントを[Reviews]No.52に記載していますのでご確認ください。

4)実戦デビュー

国土交通省から目視外飛行の飛行許可承認が出たら、やっとゴーグルを装着してFPV飛行です。機体の特性を把握した補助者担当の方といっしょに安全に留意しておもいっきり楽しんください!

まとめ

DJI FPVは、これまで無線や機体組み立て等の専門的な知識が必要だったFPVドローンを、いっきに身近なものにしました。シミュレーターによる練習環境や今までの空撮機の流れを組む「Nモード」「Sモード」、フェールセーフ、緊急ブレーキ&ホバリング機能などにより安全面も考慮された仕組みを持っています。

とはいえ、加速の鋭さや重量などを考えると考えると万が一のときには大きな事故につながりかねません。事故や危険な飛行が続けば、ドローンの利活用を妨げる原因のひとつにもなる可能性があります。飛ばすパイロットひとりひとりが責任を持って飛行ルールや安全飛行環境の構築を深く理解し、このFPVという魅力的な文化を大切に育てることが大切です。

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