【「でっけぇ風呂場で待ってます」脚本担当の人気コント師インタビュー④】シソンヌ・じろう☆最終話のお気に入りシーンに「今から見るのが楽しみ」

北山宏光と佐藤勝利がダブル主演を務める銭湯コメディー「でっけぇ風呂場で待ってます」(日本テレビ)で脚本を手掛ける人気コント師へのインタビュー企画、ラストはシソンヌ・じろうが登場。

「キングオブコント2014」での優勝以降、年々単独ライブの規模を拡大しているコント師・シソンヌ。ネタ作りを担当するじろうは、ドラマや映画の脚本家としても活躍している。今作では第1話を担当し、設定やキャラクターなど「でっけぇ風呂場で待ってます」の“コア”の部分を生み出したじろうに、制作の裏話やドラマ脚本を書くことについての意外な(?)思いを明かしてもらった。

――今回はどういった経緯で「でっけぇ風呂場で待ってます」の脚本を担当されることになったのでしょうか?

「企画・演出の橋本(和明)さんから『銭湯を舞台にしたシットコムをやりたい』と声を掛けていただきました。でも僕、まず“シットコム”が分かっていなくて(笑)。お話を聞いて、子どもの頃に見ていた『フルハウス』みたいな感じのものなんだなっていうのが、ようやく分かったんです」

――企画内容を聞いて、どう思われましたか?

「普段書いているコントもだいたいワンシチュエーションですし、以前橋本さんとご一緒した『小山内三兄弟』シリーズも一つの部屋で展開していくドラマだったので、そこはまぁいけそうだなと。ただ、最初の段階では、できればスタジオにお客さんを入れた状態で撮影したいんだ、という話だったんですよ。コロナ禍になってしまって、それはかなわなかったんですが」

――今作はじろうさん以外にもかが屋・賀屋壮也さん、ハナコ・秋山寛貴さん、空気階段・水川かたまりさんと、コント師の方々が交代で脚本を書かれています。じろうさんは4人のリーダーとして、第1話を担当されましたね。基本の設定やキャラクター造形などはどのように考えましたか?

「どう書いたかなぁ…。僕、普段あまりテレビを見る方ではないので、北山(宏光)くんと(佐藤)勝利くんがこれまでどんな作品に出てきたのかをスタッフさんに聞いて。北山くんが演じる松見芯は『昔やんちゃだった』という設定にすると説得力があるかなと思って、キャラクターを作りました。勝利くんは、これまでやったことのなさそうな人物の方がやりがいを感じてくれるかなと思って、梅ヶ丘龍大というキャラクターを書いていきました。自分の担当以外の回についても、一応全員の脚本を僕が見たんですよ。『俺』と『僕』とかの口調を統一したりはしましたけど、内容は触りませんでした」

――他の3人の脚本を読まれての感想は?

「やっぱり他の3人とは年が違って僕だけ圧倒的におじさんなんで、通ってきたものがこんなに違うんだなとは思いましたね。登場人物の会話に出てくる音楽の話とかが、僕は昭和・平成なんですよ。MCハマーとか(笑)。そこですごいジェネレーションギャップというか、世代の差を感じましたね。でもやっぱりそれぞれ、普段やっているコントの雰囲気が感じられたのはいいなと思いました」

――特に秋山さんと水川さんは今回が初めてのドラマ脚本とのことですが、相談を受けたりは?

「『何かあったら聞いてね』とは伝えて、最初に4人のLINEグループは作ったんですよ。でも特に相談はなかったので、結局LINEは主に現場の写真を送りあうのに使っていました(笑)。ただ秋山くんは、困った時に僕が書いた脚本を見て『この設定でこれだけいろいろ転がせるんだな』って思ってくれたと後から聞いて、うれしかったです。コントだと長くても10分程度なので、みんなやっぱり長く書くことに苦労していたみたいですね。僕も3人よりは(ドラマ脚本の)数を書いていますけど、ドラマの長さには慣れなくて。いまだになんとか小細工してページ数を増やそうとしています。1行多めにエンターキーを押したり、『17ページの1行目で終わるより16ページパンパンの方が印象がいいんじゃないか?』って考えたりして(笑)」

――じろうさんの脚本には「流れで」「自由に」と書かれている部分が何箇所かありましたが、それは文字に書き切れない部分があるからですか?

「それもありますし、橋本さんに『演者さんに頑張るところを与えてあげてください』と言われていたので。一字一句台本通りじゃなくて、自分たちで考えてオモシロを作り出す、余白の部分をできれば各話用意してくださいということだったので、そうなりました」

――橋本さんはそんな狙いもしていたんですね。橋本さんといえば、シソンヌも活躍している「有吉の壁」の総合演出でもありますよね。「一般人の壁」で披露するネタは、完全に芸人さんに委ねられているんですか?

「事前にロケ場所が動画で送られてくるんです。『こういうルートで周ります』って。それをおのおのが見て、『ここでこういうことができそうだな』と考えて提案するという感じです」

――楽しいですか?

「楽しいですね。ただ、新しい場所だと『新鮮だな、新しいことができそうだな』って思うんですけど、以前やったことのある場所と似ているシチュエーションがくると、『何をやろうかな』って結構悩むこともあります」

――じろうさんはこれまでもたくさんのドラマ脚本を書いていますが、ご自身の脚本についてはどう評価されていますか?

「いやぁ、脚本を書くたびに『向いてないな』と思いますね。やっぱり自分は演者なんだなって。楽しさはまだ見いだせなくて、書くたびに難しさばかり感じています。なんとなく、このテンポ、このトーンでやりとりしたらウケるんじゃないかっていうイメージで書くんですけど、そのままいくことって本当にないんですよ。だから、僕の脚本って台本で見た時の面白さじゃないんだと思います。本当に微妙なやりとりの間、テンポ、表情とかの蓄積でとっていく笑いが多いんだなって。だから、自分でやるにはいいけど、人に書くものではないなぁっていつも思ってしまうんです…」

――逆に言えば、ご自分には問題なく書けるわけですか?

「そうですね。今作でいえば、(相方の)長谷川(忍)さんも僕も出ていたので、その部分に関しては多少楽に書けるんですけどね。長谷川さんに関しては散々書いてきているんで計算できますし、確実に面白くできるというのはあります。自分についても、どういうこと言ったらウケるかはずっとやってきていて分かるので」

――普段、シソンヌのコントはいつも文字にしているんですか?

「してます。でも流れがこうだよというだけで、合間合間は本当に好きにやりとりするので、最初に書いたものからどんどん増えていきます」

――じろうさんは「でっけぇ風呂場で待ってます」の第1話、5話、最終話の3作を担当されましたが、特にお気に入りのシーンはありますか?

「最終話に、チョコレートプラネットが出てくれているんです。チョコプラが出られるって決まったのが撮影の2、3日前だったんですけど、いざ出演できると分かった時は、もうそのシーン、一瞬で書けました。彼らの撮影の時、僕は現場に行けなかったんですよ。だからプロデューサーさんが現場の写真を送ってくださったんですけど、長田(庄平)は絶対にここでこのボケをするんだろうなって、僕が思った通りのことをしている写真があったんです。文字にしてないのに、やっぱり分かるもんだなって(笑)」

――やはり同期で、「チョコンヌ」として長く一緒にやってこられただけあって。

「そうなんですよ。あいつらはたぶん僕の思った通りに、さらにチョコプラならではの面白さを足してやってくれていると思うので、最終話を見るのが今から楽しみですね」

【プロフィール】

じろう
1978年7月14日、青森生まれ。蟹座。B型。2006年に長谷川忍とシソンヌを結成。「LIFE!~人生に捧げるコント~」(NHK総合)、「有吉の壁」(日本テレビ系)などに出演しているほか、映画「甘いお酒でうがい」(2020年)、ドラマ「小山内三兄弟」シリーズなど、脚本も多数手掛ける。シソンヌライブ「neuf」のDVDが発売中。

【番組情報】

「でっけぇ風呂場で待ってます」
日本テレビ
月曜 深夜0:59~1:29


【あらすじ 最終話】

鵬の湯では毎年、3月31日を「鵬の日」として無料開放していた。そのお祭りの準備に追われていた松見(北山)、梅ヶ丘(佐藤)、瀧薫(長谷川)、竹ノ森光太郎(戸塚純貴)。まいど様(じろう)が先代の孫からの「鵬太鼓」を届けにきたりと慌ただしい中、端本りほ(平田敦子)がチンピラ2人が松見のことを捜し回っていると言ってくる。

取材・文/釣木文恵 撮影/天野良子

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