巨人・野上の完全復活は… アキレス腱断裂からカムバックの遠藤一彦氏に聞く

アキレス腱復活の大けがから復活登板を果たした野上

左アキレス腱断裂の大ケガから復活した巨人・野上亮磨投手(33)に〝先輩〟から熱いエールが送られた。2日のヤクルト戦(東京ドーム)で605日ぶりの一軍マウンドに立った野上は6回2失点と試合をつくったが無援護に泣き、0―2で敗れた。白星はお預けも力投を見せた右腕の〝完全復活〟はあるのか? 同じケガから復帰しカムバック賞を受賞した経験を持つ本紙評論家・遠藤一彦氏(65)の見立ては――。

一軍に戻ってきた喜びに野上の体が躍動した。跳ねるようなフォームからキレのあるボールで、ツバメ打線を5回まで2安打無失点。6回一死一塁で村上に特大の3号2ランを被弾したが、6回95球4安打7奪三振2失点と上々の投球だった。

だが、頼みのG打線が相手先発・小川の前に8回途中無得点。後続も打てず、今季初のゼロ封負けを喫した。野上は2018年5月13日中日戦(東京ドーム)以来となる1055日ぶりの復活勝利はならなかった。

それでも原監督は「結構、メリハリの効いた、いい投球でしたけどね」と右腕に合格点を出すと、返す刀で「まあ0点じゃね」と打線をチクリ。野上は「(打者)ひとり一人、1球1球に気持ちを込めて噛みしめながら投球しましたが、あの(本塁打の)1球は悔いが残ります。同じ後悔をしないためにも、またしっかりと練習したいと思います」と前を向いた。

19年8月6日中日戦(ナゴヤドーム)以来の一軍先発。開幕投手・菅野が脚の違和感で3月30日に登録抹消となり、二軍で好調だった右腕が指名された。

ここまでの道のりは険しかった。17年オフに西武からFAで巨人に加わった野上を19年10月20日、アクシデントが襲った。二軍戦登板中に左足アキレス腱を断裂する大けがを負った。

一般人でも歩行再開まで約3か月かかる重傷。球界でアキレス腱断裂からケガ以前の力を取り戻せたのは門田博光氏(南海)、前田智徳氏(広島)、西岡剛氏(阪神)ら野手ばかり。投手では遠藤一彦氏(大洋)ぐらいしか例がない。

その〝レアケース〟である遠藤氏は「野上選手はしっかりとリハビリを経て、そのうえで復帰している。ケガをする前の力は十分に戻っているのでは」と分析した。

そこには自身の苦い経験がある。1987年10月3日の巨人戦(後楽園)で大洋のエースだった遠藤氏は、走塁中に右アキレス腱を断裂。すぐに手術を行い2か月間入院した。「私の場合は翌年の開幕戦での復帰にこだわって、リハビリにほとんど時間をかけなかった。1年間ぐらい時間をかけていたら、その後の野球人生は違っていた」(遠藤氏)。

何とか開幕に間に合わせたものの、5勝12敗と6年続けた2桁勝利がストップ。それでも90年に抑えに転向し21セーブを挙げカムバック賞を受賞するなど92年まで現役を続けた。「手術後、右足ふくらはぎが2センチ細くなった。軸足だったので蹴る力が弱くなって、ボールの勢いが戻らなかった」と悔やんだ。

野上の復帰登板を見届けた遠藤氏は「ケガの箇所が左足というのも、軸足の右足よりは影響が少ない。登板を重ねていけば、十分に一軍ローテで戦えるのでは」と〝先輩〟としてエールを送った。

登板機会の関係により右腕は再びファームで調整する。もちろん野上にとって、この日はあくまでもスタートライン。これまでケガで迷惑をかけたチームのため精いっぱい腕を振る。

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