「私のおじいちゃん?」私宅監置された祖父の過去を孫が追う

 日本復帰前の沖縄で合法化されていた、精神障がい者を小屋に閉じ込め隔離する「私宅監置」。神戸市の幸恵さん(41)は2年前、偶然見たドキュメンタリー番組がきっかけで、会ったことのなかった祖父がその監置対象だったことを知った。「私だってあの時代に生きていたら、私宅監置はやむを得ないものだと考えたかもしれない。二度と同じことが起こらないよう、隠さずに話していきたい」。幸恵さんは思いを強くしている。

 閉じ込められた小屋の格子の向こうから、穏やかな表情でこちらを見つめる男性。「おじいちゃん?」。幸恵さんは2年前に偶然番組を見て、祖父とはすぐに確信できなかった。既に他界していた幸恵さんの父は、沖縄を離れた理由や祖父について多くを語らず、幸恵さんを故郷に連れて行ったこともなかったからだ。

 それでも閉じ込められた男性の「金太郎」という特徴的な名前や、父の故郷とみられる離島が出ていたことが気になり、番組に協力した県精神保健福祉会連合会に連絡。制作者でフリーテレビディレクターの原義和さん(51)とつながり、祖父に間違いないことを知らされた。

 昨年、祖父の過去をたどろうと沖縄を訪れた。監置小屋は残っていないが、祖父を知る元看護師から「いつもニコニコしていた」と伝えられ、私宅監置の様子を知る女性は、タブーにされた過去を涙を流し語ってくれた。

 私宅監置をテーマに、幸恵さんも出演する映画「夜明け前のうた 消された沖縄の障害者」が桜坂劇場(那覇市)で3日、公開された。来県中の幸恵さんは舞台あいさつで語り掛けた。「閉じ込められた人と同様に、家族も違う苦しみを味わった。そのことは伝えたい」

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