池江璃花子の「五輪切符」が支持率V字回復に!?競泳関係者「日本中が感動するのでは」

池江の姿に日本中がもらい泣きした

これで風向きが変わるのか――。競泳の東京五輪代表選考会を兼ねる日本選手権第2日(4日、東京アクアティクスセンター)、白血病からの完全復活を目指す池江璃花子(20=ルネサンス)が、女子100メートルバタフライを57秒77で優勝。400メートルメドレーリレーの派遣標準記録を突破して東京五輪出場を決めた。日本中に感動と勇気を与えた奇跡の復活劇。新型コロナウイルス感染拡大や大会組織委員会の不祥事により世間で開催反対の声が強まる中、五輪関係者は〝支持率V字回復〟の起爆剤としてヒロインに期待を寄せている。

誰よりも速くフィニッシュした池江は電光掲示板で1着を確認してガッツポーズ。その後は感極まり、しばらくプールから上がることができなかった。「本当に言葉にできないような、うれしい気持ちになった。あの一瞬で今までの自分のつらかったこととか、いろいろ思い出した。ここまで戻ってこれたことがすごくうれしくて。なかなか体もきつかったですし、上がれなかった」

一昨年2月に白血病を公表し、東京五輪への道は閉ざされたかに思われた。ところが、コロナ禍で大会が1年延期となり、懸命なリハビリとトレーニングを継続した結果、選考会でリレーの派遣標準記録をクリア。五輪の出場権を実力でもぎ取った池江は「まさか優勝できるとは思っていなかった。5年前の(リオ)五輪の選考会よりもずっと自信もなかったし、自分が勝てるのはずっと先のことだと思っていた」と思いを語った。

その池江には、五輪関係者の間で〝超逆風〟を吹き飛ばす起爆剤としての期待も寄せられる。開催まで4か月を切った東京五輪を取り巻く状況は厳しさを増すばかり。新型コロナのさらなる感染拡大が不安視されており、組織委の森喜朗前会長(83)による女性蔑視発言や開閉会式の演出問題なども波紋を広げ、世間では開催中止を求める声が相次いでいる。

日本オリンピック委員会(JOC)の関係者は「(現在の反対ムードを)ひっくり返せるのはアスリートの活躍しかない」とした上で「彼女(池江)の注目度は他のアスリートにない。それだけ逆境をはね返せる力があるということ」と指摘する。ある競泳関係者も「みんな、池江が五輪で泳ぐ姿を見たいと思う。五輪で泳いでいるというだけで、おそらく日本中が感動するのでは。池江が優勝した瞬間、五輪を反対する人は減ると思ったし、五輪が終わったら『絶対やってよかったな』となるはず」と言い切った。

振り返れば、池江は昨年7月に国立競技場で行われた五輪開幕の1年前セレモニーに登場。全世界のアスリートへメッセージを送り、大きな反響を呼んだ。そして、この日の泳ぎで見せた「奇跡の復活劇」。東京五輪に対する風向きを変えるのに、十分過ぎるインパクトを与えたのは間違いないだろう。実際、ネット上では「五輪で頑張ってほしい」「本番が楽しみ」などと五輪開催を前提とする意見も多く書き込まれた。

池江は今後、得意とする100メートル自由形(8日決勝)などでも代表入りする可能性がある。五輪開催が実現すれば、ミラクルヒロインが一気に本番の「主役」に躍り出ることになりそうだ。

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