〈じょうえつレポート〉住民自治への第一歩 名立まちづくり協議会 「住民による住民のための」地域で独自計画策定

 住民の手でまちづくり計画―。名立区では名立まちづくり協議会(三浦元二会長)が中心となり、「名立まちづくり計画」を策定した。上越市総合計画のように行政がまちづくり計画を作るのが通例だが、指針となるまちづくり将来像の他、同協議会の役割や位置付けを地域として示した。4月中に住民に配布する。区内各団体の横のつながりを強め、「名立区住民による名立区住民のためのまちづくり」という住民自治がスタートする。

◇指針となる将来像が必要

 「ここで暮らす人にとっては、この地域が将来どうなるのか。エリア的な考えはやっぱり名立。行政の総合計画に入れてくれというのではなく、地域としてできることだけを考えてやってみようかと」。昨年4月に就任し、協議会の役割や位置付けを考えてきた名立まちづくり協議会の三浦会長(70、事務局長兼務)はこう話す。

 自身、市の部長として総合計画や福祉計画などの策定に携わってきた。「今まで経験したことを(地元に)お返ししたい」と、退職後は出身地の同区内の各団体に積極的に関わってきた。それらの経験を基に、まちづくり協議会に求められる役割を考えた時に、平成17年1月の市町村合併から15年以上たち、コロナ禍で新しい生活様式が叫ばれる今こそ、「どのようなまちづくりを進めていけばいいのかを、みんなで描くことが大切」と、地域の指針となる将来像やまちづくり計画の必要性を感じていたという。

名立まちづくり協議会主催として、コロナ禍の昨年行われた千羽鶴プロジェクト

◇難しさ認識も行動計画検討

 昨年8月に策定委員会を設置し、検討を開始。9月からまちづくりに関する住民アンケートを実施し、11月にまちづくりの担い手となる中高生や20~30代を中心とした若者会議を開くなど、取り組みを重ねてきた。アンケートの回答率は約70%に及び、まちづくりに対する住民の熱い思いが反映された。

若者の視点でまちづくりへの意見を出し合った昨年11月の「若者会議」

 これらの意見を踏まえ、「暮らし」「福祉」「子どもたちの将来」「地域づくり」の四つの分野を重点に設定し、包括した将来像に「一人ひとりの生命(いのち)と暮らしを守り、みんなでつくる誰もが安心して暮らせるまちづくり」を掲げた。「福祉」については令和元、2年度で策定された名立区地域福祉活動計画およびアクションプランとの整合を図った。

 ただ、「まちづくり協議会は単なる任意団体であり、公的な権限やお金はない。総合計画にあるような産業振興や教育振興などができるわけではない。地域の任意団体として、住民主体として何を取り組めるか」「地域全体で人口減少、少子高齢化が進み、具体的に目標を掲げて進んでいくのは難しい部分がある。今までやってきたのを計画に照らして見直す意識を持つだけでも違うのでは」とし、住民への働き掛けや実効性という部分で難しさを認識しながらも、今後具体的な仕掛けやアクションプランなどに落とし込めるかを模索していく。

◇相互理解深め各団体で連携

 3月26日夜、地域福祉活動計画実行委員会と名立まちづくり計画策定委員会が地区公民館で開かれた。委員は区内のさまざまな団体から出され、意見を交わし合った。委員からは「いろいろな団体が集まってプラン作りに取り組めるのが良い」「こういう場をつくることで互いの相互理解が深まった」と前向きな意見の他、今後を見据え「各団体が情報交換できる場やチェック機能を」「町内会の理解が重要」と継続や連携を望む声、「住民がどれだけ賛同してくれるか」と懸念の声も聞かれた。

 今後は、協議会が「プラットホーム的な形」で各団体をつなぎ、総合事務所と地域協議会、町内会長協議会、住民福祉会、まちづくり協議会の5団体で連絡会をつくり、前に進めていくという。

◇住民意識付けまち全体で

 策定委員会の松本新一委員長(72、名立区住民福祉会会長)は「ようやくプランが出来上がったので、今後どういう形で皆さんを引き出して行事をやっていくか。一部の人ではなく、まち全体で盛り上がる形にしていきたい」と住民を広く巻き込む考え。三浦会長は「合併の閉塞感の打破になるかは分からないが、地域の人が自分たちのまちがどうありたいか、全体としてぼんやりとしてでも分かり合える部分があればいい」と、計画をまちづくりへの意識付けとして捉える。

 各区のまちづくり団体を所管する上越市共生まちづくり課は「地域の思いや意識を率先してまとめられ、非常にありがたい。あらためてご自分たちの地域を見直すことにもつながる。市も協力していきたい。住民自治の第一歩として期待している」と、先導的な名立区の取り組みを注視している。

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