「郵便ポスト 近所にない」 さて困った、設置どう決まる? 全国的には微減傾向

ポストから郵便物を収集する職員=鹿児島市与次郎1丁目

 「近所に郵便ポストがなくて困る」。こんな声が南日本新聞社の「こちら373」に届いた。投稿したのは鹿児島市下福元町の男性(53)。周辺はここ数年で住宅が急に増えた地域で、街の変化に追いつかない状況がうかがえた。ポストの配置はどうやって決まるのだろう。

 投稿者は国道225号影原交差点近くに、8年前に引っ越してきた。徒歩圏にはなく「最も近いポストは車で5分ほどかかる」と漏らす。

 古くからの住民によると、付近は昔からポストがなかった。郵便局側に設置を要望したこともあるが、実現しなかった。この5年で戸建てが急増し、「不便に感じる人も増えたのだろう」とみる。

 ポストが消えた場所もある。同市田上1丁目では少なくとも70年以上前からあったポストが昨年姿を消した。敷地を提供していた70代男性は「理由の説明はなかった。幼い頃からずっとあったので不便」と残念がる。

 日本郵便九州支社によると、2021年2月時点で県内の郵便ポストは3480本。同支社は「過去のデータがなく県内の増減は把握できない」と回答した。情報通信白書によると、11年度末18万5000本、19年度末17万9000本と全国的には微減傾向だ。

 ポストは法律などに基づき、他との距離や利用戸数などを踏まえ、多くの利用が見込まれる駅前や公道に設置される。近年はコンビニエンスストア内も増え、県内に203カ所。同支社は「人口が減ったからポストも減らすというわけではない」と説明する。

 目安になりそうなのは、民間の郵便事業参入を認めた信書便法(03年施行)の施行規則。ポストの設置基準を過疎地の市町村で千人あたり1.9、人口10万人以上の市で1万人あたり6と定める。

 日本郵便の取締役などを務めた東洋大の松原聡教授(経済政策)は「これまで民間の新規参入はない。理由の一つが施行規則のポスト設置基準。民間に求める設置基準を、日本郵便が大きく下回ることにはならないはず」と指摘する。

 しかし、年賀状の減少や高齢化、インターネットの普及などで郵便事業の経営は厳しさを増しており、その影響は懸念される。松原教授は「増えることはなくても、当面は大きく減ることはないだろう。ただし、長い目でみると、今の規模が維持されるのかは見通せない」と話した。

外壁が途切れた民家の一角に、最近まで小さな郵便ポストがあった=鹿児島市田上1丁目

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