橋田壽賀子さん 妥協許さぬ名脚本家がホレ込んだ2人の「ジャニーズ俳優」

橋田壽賀子さん

「おしん」「渡る世間は鬼ばかり」など人気テレビドラマを手掛けた脚本家の橋田壽賀子(はしだ・すがこ、本名岩崎寿賀子=いわさき・すがこ)さんが4日午前9時13分、急性リンパ腫のため静岡県熱海市の自宅で死去した。95歳だった。ソウル生まれ。故人の遺志により葬儀・告別式は行わない。名脚本家として知られる橋田さんが役者として買っていた俳優が、ジャニーズ事務所に2人いたという。

松竹脚本部を経てフリーとなった橋田さんは、石井ふく子プロデューサーと出会ってTBS系「ただいま11人」で地歩を固め、NHK「となりの芝生」をはじめ辛口のホームドラマで主婦層に支持された。

1983年、貧困や厳しい労働に耐えながら激動の時代を生き抜く女性を描いたNHK連続テレビ小説「おしん」は最高視聴率60%以上を記録。「おしんブーム」は社会現象となり、海外でもアジアを中心に数十か国で放送され評判になった。90年に始まったTBS系「渡る世間は鬼ばかり」は嫁姑や介護など身近な問題を描き、高視聴率を誇る長寿シリーズとなった。

そんな橋田さんが役者として買っていた俳優が2人いた。〝一目ぼれ〟したのが東山紀之だったという。一目見た瞬間に「光源氏役として東山以上の役者はいない」と直感。「どうしても作りたい」とTBSに懇願して、制作されたのが総制作費12億円に上る同局40周年記念ドラマ「橋田壽賀子スペシャル 源氏物語 上の巻 下の巻」(91年、92年)だった。

「このドラマで東山は役者として相当鍛えられた。共演者は故山岡久乃さん、故大原麗子さん、三田佳子さん、泉ピン子さん、竹下景子さんなどそうそうたる面々。ある日東山が焼きそばパンを食べていたところ、山岡さんから『光源氏が焼きそばパンにむしゃぶりつくわけがない。役作りは私生活から始まるんだから、もっと高貴に振る舞え!』と叱られたらしい。東山はそれ以来、焼きそばパンを食べれなくなったそうです(笑い)」(芸能プロ関係者)

かねて「戦争と平和」が「一生のテーマ」と公言していた橋田さんが「私の遺言」と書き下ろしたのが、戦乱の時代を生き抜いた日系アメリカ移民の家族ドラマ「99年の愛~JAPANESE AMERICANS~」。終戦65年とTBS開局60周年の特別企画として、2010年11月に放送された。

構想5年。TBSは巨額制作費を投じ、大規模な米国ロケを敢行した。橋田さんが主役に指名したのは草なぎ剛(46)だった。女性週刊誌「女性セブン」の取材で橋田さんは「あの役は、香取慎吾君でも木村拓哉君でもない。とにかく、あのじーっと耐える感じは、草なぎ君にしか出せない。彼しかいないって思った」と振り返っている。

折しもクランクイン直前の09年4月、草なぎが泥酔事件を起こし、TBS側から主役の交代を打診されたが、橋田さんは「草なぎ君でいい」と突っぱねたという。

同ドラマは5夜連続放送。スポットCMで流れた、草なぎがよだれを流し号泣絶叫する迫真シーンのインパクトもあり、平均視聴率15・3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。

橋田さんがセブンに明かしたところによると、その後、2人が一緒に食事した際に橋田さんが酒を勧めても草なぎは一切口にしなかった。橋田さんいわく、草なぎは「世俗にまみれていない。純朴っていうか、少年の心のまま大人になった感じ」で、そのストイックさを気に入っていた。

草なぎも今では難役をこなし、主要映画賞の主演男優賞を獲るほどの役者だ。そんな成長を、橋田さんも喜んでいたに違いない。

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