【4月1日、70歳就業法施行】70歳定年延長で高齢者の働く機会は本当に増えるのか?

今月1日、希望する従業員が70歳まで働けるようにする「改正高年齢者雇用安定法(70歳就業法)」が施行され、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務になりました。

ところが、「70歳就業法に対応予定の企業は半数以下」という調査結果もこのほど明らかになったのです。

これから高齢者の働く機会は、本当に増えていくのでしょうか。

シニアの働き方が変わる?!

この4月1日に「70歳就業法」が施行されました。
少子化に伴う労働力不足のため、増える一方の元気な高齢者の皆さんが大事な働き手として期待されているのです。

今後は70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となり、企業には次の⑴~⑸の“いずれか″を行うことが求められています。

■高年齢者就業確保措置
(1)70歳までの定年の引き上げ
(2)定年制の廃止
(3)70歳までの継続雇用(再雇用、勤務延長制度)
(4)70歳まで(フリーランスとして)業務委託契約を締結
(5)70歳まで社会貢献活動への参加を支援

さて、人生100年時代と言われるなか、あなたはいつまで働きたいと考えていますか。
各種のアンケート調査から、皆さんの本音を見てみましょう。

全世代の6割「定年後も働きたい」

日本生命保険が昨年9月に発表した、定年退職後の生活に関するアンケートによると、回答者(20代~70代の約7500名)の64%が「定年後も働き続けたい」と望んでいることが分かりました。

「定年後のプランはどうお考えですか?」との質問に対し、「現在の仕事を続けたい」が38.7%、「別の仕事をしたい」が25.3%で、合わせて64%は働き続けることを希望したのです。

❑分析してみるとー
➊全世代平均で64%の人が、定年後も「仕事を続けたい」。
➋年齢が高いほど、「現在の仕事を続けたい」という人が多い。
➌その一方、若い世代ほど「働かずに、違うことをしたい」という人が多い。

〈出典:ニッセイ インターネットアンケート2020年〉

中高年の4割「70歳以降も働きたい」

一方、三井不動産リアルティが今年2月、45歳以上の中高年層1,851名(首都圏在住)に行ったアンケートの結果も注目されています。

「何歳まで働きたいですか?」と尋ねたところ、最も多い退職(予定)年齢は「65歳」(33.9%)で、次が「70歳」(24.9%)。
そして、全体の4割(40.2%)が「70歳以降も働きたい」と答えたのです。

〈出典:中高年層の住みかえ等に関する調査〉

70歳就業法に対応する企業、まだ半数以下

それでは、70歳就業法で「高年齢者就業確保措置」が努力義務となった企業サイドでは、果たしてどう考えているのでしょうか。

人材・広告事業大手のマイナビは今年1月、企業の中途採用担当者1,333名にアンケートを行い、「70歳就業法にどう対応するか」聞きました。

その結果、「何らかの対応をする」(「検討中」を除く)と回答した企業は47.1%(※1)で、半数に満たなかったのです。
(※1)「定年を延長する(16.9%)」+「定年を撤廃する(8.9%)」+「再雇用制度を手厚くする(21.3%)」の合計

上場企業では60.5%が対応予定でしたが、未上場企業は41.6%にとどまっています。

【グラフ】「70歳就業法」への対応について

〈出典:企業の雇用施策に関するレポート(2021年版)〉

今回の「高年齢者就業確保措置」はあくまでも罰則のない努力義務ですので、まだ対応を検討中の企業が多いものと思われます。

「シニアの豊富な経験を生かしたい」という企業がもっと出てくるよう、今後に期待したいところです。

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