ガスリーに無関心なレッドブルF1。2022年ドライバーを検討中のアルピーヌが状況を注視

 ピエール・ガスリーは、スクーデリア・アルファタウリに所属しながら、レッドブル・ホンダに昇格される可能性はゼロという特異な状況に置かれている。2019年と2020年のチームメイト、ダニール・クビアトは、レッドブル陣営から離脱した後、F1レースシートを見つけることができず、今年はアルピーヌのリザーブドライバーを務めている。しかしガスリーの場合は、彼を欲しがるチームがあるだろうことから、レッドブル/アルファタウリとの契約を終えることになっても、F1キャリアを続けていくことができるだろう。

 ただし、ガスリーがレッドブル・レーシングに復帰する可能性はない。首脳陣はその意向を彼に対して明確に示しているのだ。

 2021年F1バーレーンGPの予選で、ガスリーは卓越したパフォーマンスを見せて、5番手を獲得した。フェラーリのカルロス・サインツJr、マクラーレンのふたりの前の位置だ。しかしモータースポーツコンサルタントを務めるヘルムート・マルコはその成果の価値を低めるかのような発言を行った。

2021年F1第1戦バーレーンGP ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)

 ドイツのウェブサイト『formel1.de』のインタビューにおいて、マルコは、マックス・フェルスタッペンがアルファタウリAT02に乗っていたら、ガスリーより速いタイムを記録していたとの考えを示した。

「マックスなら予選であと0.2秒か0.3秒は引き出してみせた」とマルコは語った。

 マルコの予想が正しいなら、アルファタウリに乗るフェルスタッペンは、ガスリーより0.223秒速いタイムを出していたメルセデスのバルテリ・ボッタスを抜いて予選3番手を獲得したかもしれないということになる。この予測は楽観的すぎるという見方が大半ではあるが、少なくとも彼がガスリーに対して高い評価を与えていないことが、このコメントからは明らかだ。

■「レッドブル時代は十分なサポートを得られなかった」とガスリー

 イギリスの情報筋によると、ガスリーの仕事へのアプローチは、レッドブル代表クリスチャン・ホーナーおよび技術チームが理想と信じるものとは対極的なものであったため、加入当初からレッドブル・レーシングにうまく馴染むことができなかったという。2019年のプレシーズンテストでクラッシュしたことで、エンジニアとメカニックはガスリーへの信頼を失い、それが回復されることはなかった。結局ガスリーは2019年ベルギーGPを前に、アレクサンダー・アルボンと交代させられる形で、トロロッソに戻された。

 最近ガスリーは当時のことをこう振り返っている。
「マシンに乗って最初にミスをした瞬間から、周囲の人たちが徐々に僕に対して批判的な態度を示すようになってきたように感じた」

「ウィンターテストでクラッシュした。その瞬間からシーズンがうまくうまくいかなくなった。会見で僕が何を言っても、自分の調子に対する言い訳だと曲解され、僕を弁護してくれる人は誰もいなかった」

「あのマシンは完璧ではなかったけれど、僕は向上を目指して、毎週末学習するために全力を尽くしていたんだけどね。僕にとっては厳しい時期だった。レッドブルでは100パーセントのサポートを受けているとは感じなかったし、ここで走った他のドライバーたちと同じように扱われているとも感じなかった。それは僕にとっては受け入れられないことだった。毎日必死で働き、チームのためにいい結果を出そうと努力していたが、成功するために必要なすべてのツールを与えられることはなかったんだ。解決法を提示しようとしても、僕の意見には耳を傾けられなかったり、変化が見えるのに数週間かかったりした」

2019年F1ドイツGP ピエール・ガスリー(レッドブル)とヘルムート・マルコ

 しかしガスリーを高く評価しているチームはある。たとえば、アルピーヌはガスリーのパフォーマンスと契約状況を注視している。アルピーヌは、フェルナンド・アロンソとは2022年末までの契約を結んでいるものの、エステバン・オコンとの現契約は今年末で切れる。そのため今年9月半ばごろには、オコンの契約をメルセデスから買い取るのか、メルセデスに返すのかを決める必要があるのだ。

 ガスリーは昨年イタリアGPで優勝し、その速さとレーステクニックを証明した。アルピーヌにとっては、オコンを手放す場合の後任の最有力候補であるはずだ。ガスリーは、レッドブルのプログラムから切られた後に生き残ってF1キャリアで成功を収める、最初のドライバーになるかもしれない。

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