バゲットにコバライネン、コロナ禍での来日と苦労。スーパーGT開幕戦岡山に向けての手応え

 いよいよ今週末に開幕を迎える2021年のスーパーGT。昨年からの新型コロナウイルス感染拡大に伴い、ドライバーラインアップを見れば外国人ドライバーの人数が少なくなっているが、GT500クラスに参戦するヘイキ・コバライネン(DENSO KOBELCO SARD GR Supra)とベルトラン・バケット(Astemo NSX-GT)のふたりは、公式テストから参加し、シーズン開幕に向けて準備を整えている。

 2021年もREAL RACINGから塚越広大と組んで参戦するベルトラン・バケット。昨年は最初の緊急事態宣言期間中は母国のベルギーに帰国していたが、その後の入国規制の関係でシーズン前のテストには参加できなかった。なんとか開幕戦からエントリーはできたものの、数ヶ月のブランクを取り戻すのに時間がかかってしまい、第1戦では思うような走りができなかった。

 そのときの対策もあってか、2020年シーズン終了後に日本を出国した際には、再入国申請をはじめとした諸手続きをしっかりと行い、3月の公式テストに対して余裕を持って日本にやってきた。

「昨年は、コロナ禍での入国規制の影響で開幕前のテストに参加できなくて、その影響が第1戦にも出てしまった。だけど今年は、2回の公式テストに加えて鈴鹿でのメーカーテストにも参加できて、合計6日間も走り込むことができた」

「テストでは様々なタイヤを試せたし、セッティングのことについても、色々と理解を深めることができた。これらの経験は必ずシーズンに役立つことになるだろう」

 そう語ったバケットの家族は現在も母国ベルギーにいる状態だ。バゲット本人は昨年は開幕戦から最終戦まで日本に滞在し続け、今年も基本的にはそうなるようだが、タイミングがあれば息子の顔を見るために帰国したいと本音を漏らす。

「正直、これからの状況をみての判断になると思う。第3戦鈴鹿から第4戦もてぎまでの間に少しインターバルができるから、もし状況が叶うなら、そこで一度母国に帰りたいというのが本音だ。家族が向こうにいて、今は離れ離れの状況だからね。僕はレーシングドライバーであり、父親でもあるから、息子の顔を見るというのはとても重要なことだ」

「もちろん、入国規制でまた日本に戻ってこられないというリスクがあるのも理解している。だから状況をみての慎重な判断となるだろう」

 岡山、富士と2回の公式テストを終え、Astemo NSX-GTも上位タイムを記録するなど、手応えを感じている様子だった。しかしバケットは、ホンダ陣営に大きなアドバンテージがあるとは思っておらず、ライバルも手強そうだと分析する。

「テストだから、正確な位置関係や勢力図はわからないけど、少なくとも僕たちとトヨタは同じようなポジションにいると思う。だから、すごく僅差の戦いになるだろう」

「岡山に関しては、ホンダの方が少し有利かなという印象だけど、富士はテストの結果を見ての通りトヨタが速い。彼らはストレートスピードが本当に速くて、今年もその特徴は変わっていない。富士テストの1日目で僕たちは3番手を獲得できたけど、クルマのフィーリングとしては満足していない。もっと改善が必要だと思っている」

Astemo NSX-GTのベルトラン・バゲット
2021スーパーGT富士公式テスト Astemo NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット)

 一方、昨年はコロナ禍の影響で開幕2戦の欠場を余儀なくされたコバライネン。その経験もあってか、2020年シーズン終了後に一度日本を離れたものの、年が明けるタイミングで日本に再入国し、シーズン開幕に向けた準備は日本を拠点にして行ってきた。彼も2021年シーズンの最終戦まで基本的には日本に滞在する予定で、スーパーGTのほかに全日本ラリー選手権にも参戦し、先日の第1戦ではクラス優勝を果たしている。

 そんなコバライネンだが、スーパーGTでは中山雄一とのコンビで引き続き、DENSO KOBELCO SARD GR Supraからエントリー。脇阪寿一監督が就任して2年目のシーズンを迎えるが、チームの大きな進化をコバライネンも感じており、テストでは笑みもこぼれた。

「昨年から今年にかけて、チームのレベルはものすごく上がったと思うし、全体的にしっかりと機能している。(脇阪)寿一さんという心強いリーダーがいて、なにか問題があれば、徹底的に話し合って、解決策を見出していく。間違いなく昨年から良くなっているし、チームのみんなが勝利に飢えている感じだ。エンジニアもメカニックも、ただ作業をするだけじゃなくて、クルマを良くするためにどうすればいいかというのを、自分たちで率先して改善しようとしてくれている。そこが大きな進歩だし、僕もすごく嬉しいよ」

「冬のテストでは様々なタイヤやセットアップを試した。岡山テストの1日目では少し苦戦した部分があったけど、2日目には良い手応えをつかむことができた」

「毎年そうだけどテストの結果というのは、参考にならない部分もあるし、僕たちがどの辺にいるかは正直なところ分からない。だけど、間違いなく良い位置にいて、上位争いができるポジションにいることは確かだろう。ただ、クルマのフィーリングは良い方向に来ていると思う」

 岡山公式テストの2日目にはトップタイムも記録したコバライネン。今シーズンは上位争いができそうだと楽しみにしている様子だったが、バケットと同様に今季は差がつきにくいシビアな戦いになると予想していた。

「今年は3メーカーともかなり拮抗していると思う。あるときはニッサンがトップに来たり、ときにはホンダが速さをみせる。その差はすごく接近しているし、今シーズンは超僅差の戦いになるだろう。特に予選は、本当に些細な違いで勝敗が決まると思う。何か小さな問題が発生しただけで大きく順位を落としてします。だから、全部を完璧にして全力で臨まないと今年は勝つことができないだろう」

「トップに立つため、ときにはドライバーもリスクを覚悟の上で攻め込まなければいけない。“安パイ”なドライビングをした時点で、負けが確定する。それくらい今年はシビアだよ!」

 全車がノーウェイトで臨むことになる開幕戦の岡山。ガチンコ勝負の展開になることは間違いなさそうだが、そのなかでどのチームが頭ひとつ抜け出てくるのだろうか。例年以上に注目の集まる岡山ラウンドとなりそうだ。

2021スーパーGT富士公式テスト DENSO KOBELCO SARD GR Supra(ヘイキ・コバライネン/中山雄一)

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