「朝起きてやめたいと思ったらやめる」西岡剛が現役でいる理由…そして引き際

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BC栃木・西岡剛【写真:小西亮】

BC栃木で迎える37歳シーズン「すっごい視野が広がってますね」

なぜ現役でいるのかと、人は言うかもしれない。7月で37歳を迎える。華やかなNPBの世界から去って、もう3年目。ただ不思議と、その表情は年々活力に満ちている。西岡剛内野手は、実感を込めて言う。「いま、すっごい視野が広がってますね」。今季も独立リーグでのプレーを決断。グラウンドに立ち続けることでしか得られない経験が、自らを突き動かしている。【小西亮】

新たなシーズンに向かう時はいつだって、背筋がぴんと伸びる気がする。今月1日、ルートインBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスと契約を締結。8日にチームに合流し、10日に本拠地での開幕戦を迎える。今季もこの地を選んだのには、確固たる理由に従っている。

決して後ろを向かない性格が「人生で唯一、後悔している」と刻む経験がある。2011年、ポスティングシステムを利用してツインズに移籍。メジャー1年目は68試合に出場したが、2年目は3試合にとどまった。3年契約を2年で打ち切って帰国。「あと1年いたら……」。そんな“たられば”は、もう味わいたくない。

「もしNPBに復帰できなくても、独立リーグで最低は3年やろうと最初から決めていました。プロに入った時からそう。3年間試合に出続けて初めてレギュラーだと、父の教えもあった。中学校も高校も3年。『石の上にも三年』という諺もある。きっと、3年目で見える景色もあるやろうなと」

2018年限りで阪神を戦力外に。その年の12球団合同トライアウトで声が掛からず、NPB復帰を掲げて栃木を新天地に選んだ。2019年シーズン後に再びトライアウトを受けるも、結果は変わらず。2020年は新型コロナウイルス感染拡大の状況を見極めつつ独自で調整を続け、昨年9月から2か月ほど栃木でプレーした。最高峰の舞台から離れている時間が長いほど、戻るのが困難なことくらいは理解している。

それでも、独立リーガーとして至極真っ当な目標も忘れるわけにはいかない。「野球をやっている以上、一番レベルの高い場所を目指すというのはすごくモチベーションが上がるもの。NPBの選手になれる、なれないっていうのは別問題」。ドラフト指名を夢見る若手たちと同じ方向を向いてプレーすることが、ひとつの原動力になる。

BC栃木・西岡剛【写真:小西亮】

現役でいる必要性「単純に、野球が面白いからでしょうね」

とにかく「挑戦」を好んで選んできた。2020年オフは、豪州ウインターリーグへの参戦も模索。結局コロナ禍の影響で実現には至らなかったが、まだ見ぬ土地、まだ知らぬ人への探究心は底を尽きない。ロッテで日本一を経験し、メジャーの地を踏んだ。日の丸を背負って五輪に出場し、WBCでは世界一の美酒も味わった。それでも、なお言う。

「経験しないと、言葉で伝えることはできませんからね」

不惑が近づく中でユニホームを着続けるのもそう。現役であることでしか得られない経験を、まだ優先したい。「なぜ、やめないのか?」。そんな意地悪なことを聞かれても、平然と笑って言う。

「単純に、野球が面白いからでしょうね。ヒット打ったり、いいプレーをした時の喜び。チャンスで打てなかった時の悔しさ。守ってエラーした時のもどかしさ。それを感じているのが、僕は好きなんでしょうね」

迎えたプロ19年目。30年前の記憶を思い出しながら、ボールを追うと決めた。「小学校低学年のころ、いつも友達と公園で野球をしていました。めっちゃ楽しかった。その時の気持ちで野球をしようと思っています」。予定も、限界も、自分では決めない。

「朝起きて、やめたいなぁって思ったらやめる」。その瞬間が来るまでは、新たな刺激を求めて動き続ける。スピードスターに、ひと休みはない。

【動画】生き生きとした表情で練習する西岡剛

【動画】生き生きとした表情で練習する西岡剛 signature

(小西亮 / Ryo Konishi)