復活4冠・池江璃花子「東京五輪活躍のカギ」と「エースゆえの落とし穴」

笑顔で4冠をアピールした池江(代表撮影)

五輪本番で活躍するカギは――。競泳女子で白血病からの完全復活を目指す池江璃花子(20=ルネサンス)が代表選考会を兼ねた日本選手権で出場全種目で優勝して「4冠」を達成。リレー2種目で東京五輪の代表権を獲得した。3か月後に迫った大舞台で〝主役級〟の注目を集めることは間違いなさそうだが、期待を一身に背負うエースの立場ゆえの〝落とし穴〟も指摘されている。

池江は日本選手権で100メートルバタフライ、同自由形、50メートルバタフライ、同自由形の4種目で優勝。五輪種目で個人の派遣標準記録には及ばなかったものの、400メートルリレー、400メートルメドレーリレーで代表入りを決めた。奇跡的な復活劇は日本中に感動を与え、3か月後の大舞台でも〝主役級〟の注目を集めることは間違いない。

その池江が五輪本番で活躍するためには、何がポイントになるのか。大会を見守った2004年アテネ五輪女子800メートル自由形金メダルの柴田亜衣氏(38)は「これまで周りの人に支えられてやってきた部分はあると思うんですけど、自分のために泳いでほしいという気持ちが強いです」とアドバイスを送る。誰かのためではなく、自分のため――。いったい、どういうことなのか。

実際に、五輪の舞台を経験した柴田氏は「選考会は自分が100%なんですけど、五輪になると周りの雰囲気だったり、自分が本当にしっかりしていないといろんなことに左右されて力が出ないことがある。そういう〝怖さ〟というのは五輪ならではだと思う。どれだけ自分を保てるかが、カギになってくる」と指摘する。

五輪本番は夜に予選、午前中に決勝と難しい調整が求められる。周囲からの期待に応えることを意識しすぎるのではなく〝自分本位〟でレースに集中することも必要になるというわけだ。一方で、リレー種目は個人の泳ぎだけでなく、チーム全員で力を合わせて戦う側面がある。2016年リオ五輪でリレーの出場経験がある池江は他のメンバーを引っ張る立場にいることは確か。ただ、そこには〝落とし穴〟もあるという。

柴田氏は「厳しい言い方になりますが(池江以外の)3人がもうちょっと悔しいなと思ってくれたら。池江さんに頼ってしまう部分があるうちは強くなれないと思うので。池江さんありきではなく、彼女に負担をかけすぎないように3人がいろんなことを背負ってやるべきですね。彼女に対してもっと負けたくない気持ちを持ってほしい」と注文を付けた。

実力、存在感ともに頭一つ抜けているエースに他のメンバーが全面的に依存すれば、池江個人にとっても大きな負担となる。個々のメンバーが互いにライバル意識を持ち切磋琢磨すれば、レース本番での相乗効果も期待できるということだ。

日本選手権を終えた池江は「決まったからには、しっかり自分の使命を果たさないといけないと思っている」と早くも本番へ向けて意気込んでいる。池江個人はもちろんのこと、チーム全体としての戦いぶりにも注目が集まる。

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